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「The girls go to college, and the boys go to jail.」(「グラントリノ」より)

MY DVD:「グラントリノ:GRAN TORINO(2008年製作)」発売元:ワーナー・ホーム・ビデオ DLV-Y22509

見終わった後、希望と失望の間に漂う言葉にできない静けさのようなものを感じさせられて、いつの間にかファンになった、クリンスト・イーストウッド監督作品。これもそんな物語です。
題名のグラントリノはフォード社の車種でフォードトリノのうち、1972年から1976年までに生産された車の名称だそうです。愛称と言っても良さそうですね。いわゆる古き良きビンテージ・カー。クリント・イーストウッド演ずるウォルトは、まさにこのグラントリノそのもの。
物語は、妻の葬儀に立つ老人ウォルトが息子たちの礼儀知らずな子供をにらみつけるところから始まります。まず、彼の歯に物を着せぬ頑固老人としての姿が映し出されます。ウォルトには、朝鮮戦争での血塗られて拭うことのできない悔恨の記憶が刻まれています。彼は命乞いをする朝鮮の若者を殺した過去があったのです。
しかし、妻ドロシーを失った今もウォルトは気丈さをかけらも失ってないかのようでした。

無礼な子供たち
さて、葬式の中、ウォルトがにらみつける子供たち。
「父と子と、聖霊に。」(日本語字幕より)
と言って参列に加わるはずが、その言葉に気持ちが入っていません。
「Father, Son, Holy Spirit.」
「Father. Spirit.」
「Holy Spirit.」
「Spectacles, testicles, wallet, and watch.」(英語字幕より)

最初の子だけが、その簡素な言葉をちゃんと言ってますが、あとはだんだん省略されていきます。女の子はおへそ出しちゃってます。最後の男の子に至っては、遊んでいるとしか思えません。日本語字幕では、
「母と子とタマに。」
となってますが、実際には、
「眼鏡、睾丸、財布、そして懐中時計。」
となってます。これは、十字を切る方法として古くから知られているようです。ある映画で紹介されたことが広まるきっかけにもなったようです。ただし、財布は左手に持って、懐中時計は右手に持っていることが前提となっています。それぞれを順番に右手で示すことで、十字を切ることになるのだと思います。
日本語字幕は、男の子が茶化していることを表現しようとして苦労したことが伺えます。精霊を魂(たましい)ととらえて、「タマ」にひっかけているようですね。

告白すると
ウォルトの前に、若い神父が現れます。映画の序盤は、度重なるこの神父との会話の中に、ウォルトの人知れない心情の一端が垣間見られます。
「奥様と親しくさせていただき、ひとつ頼まれたんです。”私が死んだら、主人に気を配ってやって”と。」
「妻への親切は感謝する。話が終わったら、他の”羊”の世話を。いいな?」
「特に言い残されたのは、”主人を懺悔に行かせて、何年も行ってないから”と。」
「そんなことを?」
「ええ。」
「懺悔すると、教会は苦手で、妻への付き合いだった。ついでに告白すると、神学校出たての若造に懺悔など!」(英語字幕より)
「Your wife and I became quite close these last few months. She asked that I watch over you when she passed on. I told her I watch over my flock. But she made me promise I'd keep an extra-sharp eye on you.」
「Look, I appreciate the kindness you've shown to my wife. Now that you've spoken your piece...why don't you go tend to some of your other sheep? Okay?」
「Dorothy mentioned specifically that it was her desire for you to go to confession. She said she couldn't remember the last time you went.」
「Is that so?」
「It is.」
「Well, I confess that I never really cared for church very much. The only reason I went was because of her. And I confess that I have no desire to confess to a boy that's just out of the seminary.」(英語字幕より)

なるほど、ウォルトはとっつきにくい人物のようです。ただ、人にも自分にもウソはつかないのかなとは思います。映画が始まってまだ間がないのに、もうウォルトを好意的に見ている自分があって、痛快には見てましたが。
「watch over」で「見張る」という意味があるようです。「pass on」は「pass away」と同じ意味を持つことがあるようで、「亡くなる、他界する」となります。「flock」は群れで、この場合は「羊の群れ」のことを言ってるようです。キリスト教では、我々は「迷える子羊たち」なのですから。先ほどの、「watch over」も合わせて、次のような例文がありました。
「A shepherd watches over a flock of sheep.:羊飼いは羊の群れを見張る。」
「extra-sharp」の「extra-」は形容詞に付けて、「領域外の、範囲外の」の意の形容詞を作るそうです。「sharp」は「敏感な、厳重な」の意ですから、「特別に厳重な」と言った意味になります。
「piece」は「部分、作品、意見」。「why don't you」は、「なぜしないんだ」で「しなさいよ、しましょうよ」って感じになります。「go tend」は「go」も「tend」も動詞なので、おそらく「go and tend」だったものから「and」が省力されたのだと思います。「tend」はこの場合、「〈家畜・店など〉の番をする、〈病人・子供など〉を世話する」の意。
「mention」は「言及する、触れる」。「desire」は「願い、願望、要望」で「wish」より強いとのことです。「confession」は「告白、懺悔」。
「seminary」は「神学校」。

「この最後の数ヶ月、奥様と私はたいへん親しくなりました。彼女は、自分が死んだら、私にあなたを見守るよう頼まれたのです。私は彼女に私が群れを見張ることを言いましたが、彼女は私にあなたに対し特別厳重な目を向け続けるように約束させたのです。」
「いいか、君が妻に見せてくれた親切には感謝する。言うべきことを言ったなら、他の羊たちの世話をしたらどうかね。いいな?」
「ドロシーは、自分の願いがあなたに懺悔に行くことだったことを特におっしゃってました。彼女は言ってました。あなたが最後に行ったときを思い出せないと。」
「そうなのか?」
「そうです。」
「では、告白しよう。教会をそんなに意識したことなどはなかった。通った唯一の理由は妻だったんだ。それに告白すると、神学校を出たばかりのガキに懺悔する気持ちなどない。」
一生懸命の神父ですが、妻を失ったばかりのウォルトに懺悔をさせようとするのは無理だったように思えます。ウォルトの回りからは妻の死を悼む言葉も少なく、彼の心情を気遣う言葉はどこからも聞こえて来ません。

頭でっかちの童貞
「今日は何の押し売りだ?」
「教会に来られないので、様子を見に。」
「気が済んだろ? 帰ってもらおう。」
「話をしたいんです。」
「死んでも、お断りだね。」
「私がお嫌いですか?」
「想像しろ。」
「正直に。」
「あんたは27才の、頭でっかちの童貞。迷信深いばあ様の手をにぎり、”永遠の命”を約束する男だ。」(日本語字幕より)
「What are you peddling today, Padre?」
「Nothing. I thought I'd drop by and see you. I haven't seen you in church.」
「Now that you've done your good deed, why don't you take off down the road?」
「I'd really like to talk, Mr. Kowalski.」
「Not in this lifetime, sonny.」
「Why? Do you have a problem with me, Mr. Kowalski?」
「You don't wanna know.」
「No, I do.」
「Well, I think you're an over-educated 27-year old virgin who likes to hold hands of ladies who are superstitious and promises them eternity.」(英語字幕より)

「peddle」は、自動詞に「行商する」意があり、他動詞として「〈商品を〉売る歩く」や、「〈質の悪い商品〉を売る」意味があります。字幕の「押売」はぴったりですね。「padre」は「神父、牧師」。
「drop by」は「立ち寄る」。
「deed」は「行為、行動」。「take off」はこの場合「去る」のようです。「down the road」は「道を、道を使って」ぐらいの意味となります。
「lifetime」は「一生、生涯、終生」。「sonny」は「坊や、お若いの」。
「you don't wanna know.」はときおり見る表現です。「君は知りたいと願ってない」って、少しおかしいと思うのですが、あまりに悪い内容なので、「君が知りたいと願わない」内容であることを伝える表現なのかも知れません。
「over-educate」は「必要以上に教育する」です。これまた字幕の「頭でっかち」は秀逸です。「virgin」は「処女、童貞」。「superstitious」は「迷信的な、迷信を信じる」。「eternity」は「永遠、(死後の)永遠の世界、来世」。

「今日は何の訪問販売かね、神父?」
「なにも。立ち寄って、会ってみようと思っただけです。教会で見かけなかったものですから。」
「ではもう、その善き行いは済んだのだから、道路を去っていったらどうかね?」
「あなたとほんとうにお話がしたいのです。コワルスキーさん。」
「一生願い下げだ、坊や。」
「なぜ? 私に何か問題があるのですか、コワルスキーさん?」
「知らない方がいい。」
「いえ、知りたいです。」
「じゃ、あんたは頭でっかちの27才の童貞で、好んで迷信を信じるおばさんたちの手を握り、永遠の来世を約束する。」
ウォルトの深い孤独は、言葉に頼った風にしか見えない若い神父では癒されないと感じていたのかも知れません。神父の熱心さは、まだウォルトの心に届かないばかりか、干渉的過ぎて、かえって心を通わすには至らないようです。彼の説教や懺悔のすすめを、こともあろうに質の悪い商品を売り歩く行商人に例えたのは、単なる皮肉ではなく、そのままウォルトの心情を語ったものだと言えそうです。

生と死
隣人の少年タオに、ストリート・ギャングたちが近づいています。それはまた、ウォルトとタオの間が近づいていることを意味してました。そんな夕刻、神父も再びウォルトになんとか近づこうと、訪ねてくるのでした。
「俺はビールとバーボン。あんたは?」
「コーラを。」
「神父さん、ここはバーだよ。」
「じゃ... ジン・トニック。」
「それでいい。それで? 何の話だ?」
「奥様の望みで”懺悔”を。」
「懺悔? なぜだ?」
「奥様が”どうしても”と。」
「できもしない約束をする癖があるらしい。」
「話題を変えましょう。”生と死”。」
「”生と死”。それが何か知ってるのか?」
「そう思います。神父ですから。」
「そう、説教台で話してる。”新米神父のマニュアル”に、書かれてる通りにね。」
「いえ、そんなことは...」
「”死は、ほろ苦い、悲しみはつらいが、魂の救いは癒し”。それが”生と死”なら、お笑いだ。」
「違うのですか?」
「俺は朝鮮で3年間、毎日それを見て暮らした。人を撃ち、銃剣で刺し殺し、17才の子を、シャベルで殴り殺した。死ぬまで忘れられない。一生、頭に焼き付いてる、おぞましい記憶だ。」
「じゃ、”生”は?」
「そうだな... 戦争から生還して、家庭を持った。」
「”生”より”死”に詳しい。」
「かもしれんな。かもしれん。」(日本語字幕より)
「I'll have a Pabst and a shot of Jack and whatever he's having.」
「I'll have ha Diet Coke.」
「Bullshit, this is a bar. You have a drink.」
「Um, I'll have a gin and tonic.」
「Attaboy. So, what do you want?」
「I promised your wife I'd get you to go to confession.」
「Now, why would you do that?」
「She was very insistent. She made me.」
「You're kind of fond of promising things you can't deliver on. Right, Father?」
「Let's talk about something else.」
「What?」
「Life and death.」
「Life and death. What the hell do you know about life and death?」
「I'd like to think I know a lot. I'm a priest.」
「Yeah. You get up and preach about life and death, but all you know is what you learned in priest school. Right out of the rookie preacher's handbook.」
「I don't know about that. I think...」
「Death is bittersweet. Sort of bitter in its pain, but sweet in its salvation. That's what you know about life and death, and it's pathetic.」
「What do you know, Mr. Kowalski?」
「I know a lot. I lived for almost three years in Korea with it. (Thanks.) We shot men... stabbed them with bayonets, hacked 17-year olds to death with shovels. Stuff I'll remember till the day I die. Horrible things, but things I'll live with.」
「And what about life?」
「Well, I survived the war. Got married, had a family.」
「Sounds like you know a lot more about death than you do living.」
「Maybe so, Father. Maybe so.」(英語字幕より)

「I'll have~」はレストランなどで料理を注文するときの決まり文句。英会話学校でレストランを想定したレッスンを受けたことがあります。メニューを見ながら、「I'll hava~」で注文しました。もちろん、アメリカのレストランでちゃんと使いましたし、通じました。
「Pabst」はビールの銘柄。「Jack」はおそらくテネシー・ウイスキーの「Jack daniel's」のことですね。「a shot of 」で強い酒の「1杯」を意味するようです。
「Diet Coke」は日本でもおなじみですね。「ダイエット・コーラ」もしくは「ダイエット・コーク」で知られています。
「bullshit」は「ほら、ナンセンス」。ちなみに「bull」は「雄牛」で「shit」は「くそ」。似た言葉でウマを使った「horseshit」は「ばかなこと、つまらぬ話」となってました。
「drink」は名詞として「アルコール類、酒類」も意味します。
「a gin and tonic」はカクテルの「ジン・トニック」ですが、「a」がついてるので、「1杯のジン・トニック」のようです。ジンは、大麦、ライ麦、ジャガイモなどを原料とした蒸留酒。トニックは、トニックウォーターのことで、炭酸水に各種の香草類や柑橘類の果皮のエキス、及び糖分を加えて調製した清涼飲料水。熱帯地方のイギリス植民地で保健飲料として飲まれるようになったのが始まりで、マラリア防止のために飲まれていたようだとありました。驚きました。
「attaboy」は「That's the boy」がなまったもので、「いいぞ、よくやった」の意。女性に対しても使えるそうです。ちなみに、「attagal」というのもありました。こちらは女性に対してのみ使うようです。
余談ですが、私の小さい頃はお風呂は銭湯でした。まだ女湯に入ってた頃、一度、湯船のお湯がとても熱くて入れないくらいになってるときがありました。水の大きな蛇口は湯船の一番奥でした。私は誰に言われたわけでもなく、そのとても熱い湯をがまんして湯船の中を進み、水の蛇口を開けたことがありました。弱虫の私の人生の中で、数少ない「さすが男の子やね」と言われたときでした。「That's the boy」ということですね。「Attaboy!」ですか。残念ながら、アメリカには銭湯はなさそうですね。
「I promised your wife I'd get you to go to confession.」の「I'd」は前の「promised」の過去形を受けて、「I will」が過去形になった「I would」の短縮形と考えられます。この場合の、「will」は〈未来意志〉で、「~しよう、~するつもりだ」のようです。「get + 〈人〉+ to」で「〈人に〉~させる」となります。
ウォルトの「why would you do that?」は神父の「~I'd get you~」を受けて、質問しています。
「insistent」は形容詞で「主張[強要]する、〈要求などが〉執拗な」。「She made me.」の「made」を、使役動詞としての「make」として、「me」以下に「promised your wife I'd get you to go to confession.」が省略されたと考えると理解し易いです。
「fond」は形容詞で「of」を伴って、〈likeよりくだけた語で強意的〉で「~が大好きである」の意味がありますが、〈米国の男性はあまり用いない〉そうです。ここでは「悪いくせがある」の意と考えられます。「deliver on」で「を約束通り実行する、果たす」という意味になります。
「the hell」は、〈ののしりや悪口の〉意味を強める役目をします。
「priest」は「聖職者、牧師」。
「get up」は自動詞として「立ち上がる」。「preach」も自動詞として〈牧師などが〉「説教する」。「right out」は「すぐに、率直に」という意味があります。とりわけ「そのままに」という意味がここではいいようです。「rookie」は「新人、新米」。「handbook」は「手引き書」。
「bittersweet」は「ほろ苦い」。「sort of」は「[動詞・形容詞・副詞の前で]多少、いくらか」となります。「bitter」は「苦い、むごい、つらい」。「sweet」は「甘い、快い」。「salvation」は「〔主にキリスト教〕(罪業(sin)からの)魂の救済」。「pathetic」は「〈努力などが〉まったく不十分な、取るに足らない;救いようのない、ひどい、とても悪い」。
「 I lived for almost three years in Korea with it.」の「with it; それとともに」の「it」は「生と死」を意味するものだと考えられます。「stab」は「突き刺す」。「bayonet」は「銃剣」。語源はフランス語「bayonnette」で、銃剣の最初の製作地「Bayonne」よりとなってます。「hack」は「(おのなどで)たたき切る、めった打ちにする」。「shovel」は「シャベル」。「stuff」は「物、こと、持ち物」。「horrible」は「恐ろしい、身の毛のよだつような」。

「俺はバブストとジャック、あとはやつの飲むものなんでも。」
「私はダイエット・コークをいただきます。」
「バカな。ここはバーだ。酒を飲むんだ。」
「ジントニックを。」
「上出来だ。それでなにが望みだ?」
「私は奥様に、あなたを懺悔に行かせることを約束したのです。」
「それで、なんでそんなことをしようと?」
「奥様はたいへん強引でした。彼女が私にそうさせたのです。」
「どうやらあんたはできもしないことを約束する悪い癖があるようだな。違うかね、神父?」
「なにか他のことをお話しましょう。」
「なんだね。」
「生と死。」
「生と死。いったいあんたは生と死の何を知ってると言うのかね?」
「たくさん知ってると言いたいですね。私は聖職者ですから。」
「そうだな。あんたは立ち上がり、生と死について説教をする。しかし、神父学校で学んだことが、あんたが知っているすべてだ。新米神父の手引き書そのままにな。」
「そんなものは知りません。思うに...」
「死はほろ苦いものです。その苦痛はつらく、しかしその魂の救いは快いものです。それがあんたが生と死について知ってることさ、ひどいもんだ。」
「あなたはどんなことをご存じなのですか、コワルスキーさん?」
「たくさん知ってる。朝鮮でほぼ3年それとともに生きてきた。我々は男たちを撃ち殺した...銃剣で突き刺し、ショベルで17才の少年たちをめった打ちにして殺した。死ぬその日まで忘れることの出来ないことだ。恐ろしい事だ。だが、この事を俺は背負って生きていく。」
「では、生については?」
「そう、俺は戦争を生き残った。結婚し、家族を持った。」
「生きることより死についてよりたくさんご存じのようですね。」
「そうかも知れん、神父。そうかも。」
ウォルトのおぞましい過去が語られました。彼の記憶。分かち合えないものなのでしょうか。
妻のドロシーはウォルトを受け入れながらも、その立ち入ることの出来ない心の奥に少しでも光を与えられないかと考えていたのかも知れません。神父も簡単に立ち入るのではなく、とにかく懺悔を勧めようとしていたのかも知れません。

芝生に入るな
タオはいとこもいるストリートギャングたちに目を付けられ、ついにウォルトの愛車・グラントリノを盗もうとしますが、ウォルトに銃を突きつけられ、慌てて逃げ出します。それでもなおギャングたちはしつこくつきまとい、庭にいたタオを連れだそうとします。しかし、彼らに思わぬ敵が現れます。
「おまえら、なにしてる。」
「立て。」
「芝生に入るな。」
「ウザいじじいだ。」
「うちの芝生から出てけ。」
「とっとと家に入れ。」
「その面に穴開けたら、家に入って、赤ん坊のようにスヤスヤ眠るよ。朝鮮じゃ、お前らみたいな奴らを袋に詰め、弾よけにしてた。」
「そうか。覚えてろよ。」(日本語字幕より)
「What the hell is this?」
「Get up.」
「Get off my lawn.」
「Listen, old man, you don't wanna fuck with me.」
「Did you hear me? I said, get off my lawn now.」
「Are you fucking crazy? Go back in the house.」
「Yeah. I blow a hole in your face, and then I go in the house. And I sleep like a baby. You can count on that. We used to stack fucks like you five feet high in Korea...use you for sandbags.」
「Okay. But you better watch your back.」
「Fuck it, man, he's crazy. We'll get this cracker next time.」(英語字幕より)

「get off~」で「〈場所〉から離れる」。「lawn」は「芝生」。
「fucking」はアメリカで怒りや苛立ちの語意を強める言葉として使われ、「ひどい、いまいましい」の意。イギリス・オーストラリアでの「bloody」に当たるようです。
「blow」は「吹き飛ばす」意のようです。「count on」で「頼りにする、期待する」意味があります。「stack」は「束にする、積み重ねる」。「fuck」は名詞として「(人間の)くず、ごみみたいなやつ」の意があります。「five feet」は、「1feet」が約30センチなので、大体1.5メートルです。
「fuck it」は「くそったれめ!、ちくしょう!」など悔しがる内容のようです。「cracker」には「人種差別をする白人」という場合があるようです。研究社出版・英語スラング辞典によりますと、「白人、米南部人[米黒人の口語・1800年代から1900年代]」とあります。
「get」には「殺す、やっつける、復讐する」意があります。

「これはいったいなんだ?」
「起きあがるんだ。」
「芝生から出ろ。」
「聞きな、じいさん、俺とファックしたくねぇだろ。」
「聞こえなかったのか? 言ったろ、芝生から出ろ。」
「気でも狂ったのか? 家に戻りな。」
「ああ。きさまの顔に穴をぶち開けたら、家に戻るさ。そして赤子のように眠る。期待していいぞ。朝鮮戦争じゃ、おれたちゃ、おまえらみたいなクズどもを束にして、1.5メートルの高さにぶら下げたもんだ。きさまらをサンドバッグに使うためにな。」
「いいだろう。だが、自分の後ろに気をつけるんだな。」
「くそったれ、キチガイめ。次にゃあの白人をやってやる。」

1つだけ正しい
神父がやってきました。今度はいつもと違い、ストリートギャングたちとのもめ事は生命の危険があったのだから警察を呼ぶべきだったと言ってきたのです。ウォルトが戦時中のように臨機応変に対応したことを言っても、ここは朝鮮じゃないと一喝します。そして、先日ウォルトと話したことについて語るのでした。
「この間、あなたから”生と死”の話を聞きました。やむを得ずやった恐ろしい行為を一生忘れられないと。心のその重荷を少し軽くしてみては? 戦争は悲惨です。生き残るため、また人を助けるために敵を殺す。確かに私の知らない世界です。しかし、赦しは知っています。犯した罪を神に打ち明け、悔い改めれば、人は心の重荷を下ろせる。あなたより強く、命令で残虐行為に走った男でも、安らぎを得るのです。」
「今日は銃に弾丸をこめて、俺の所に来たようだ。」
「ありがとう。」
「1つだけ正しい。俺より強い男でも、魂の救いを得る。ハレルヤ! 万歳! だが間違いもある。」
「どの部分が?」
「命令もされず、自らやったということが恐ろしいのだ。」(日本語字幕より)
「I've been thinking about our conversation on life and death. About what you said. About how you carry around all the horrible things you were forced to do horrible things that won't leave you. It seems it would do you good to unload some of that burden. Things done during war are terrible. Being ordered to kill. Killing to save yourself, killing to save others. You're right. Those are things I know nothing about, but I do know about forgiveness and I've seen a lot of men who have confessed their sins...admitted their guilt, and left their burdens behind them. Stronger men than you. Men at war who were ordered to do appalling things and are now at peace.」
「Well, I gotta hand it to you, Padre. You came here with your guns loaded this time.」
「Thank you.」
「And you're right about one thing. About stronger men than me reaching their salvation. Well, halle-fucking-lujah. but you're wrong about something else.」
「What's that, Mr. Kowalski?」
「The thing that haunts a man the most is what he isn't ordered to do.」(英語字幕より)

「conversation」は「(うちとけた)会話、対談」で「with」や「about, on」を伴って[人との]や[~についての]となります。「carry around」で「持ち歩く」。「force」は[SVO to do]の形を取って「~することを強制する、強いる」。ここではその形で受動態となっています。「leave」は「去る、離れる」。「It seems」以下の「it would do~」の意味上の主語は「to」以下であると考えられます。そして、「would」は可能性・推量を示すもので、過去形ではありますが、現在の推量を表しているものと考えられます。「do you good」の「do」は「do + O1 + O2」の形で、「O1にO2をもたらす、与える」となるようです。「unload」は「おろす、取り除く」。「burden」は「荷、重荷」で、「(精神的な)重荷、負担」。「during」は「~の間じゅう(ずっと)」。「terrible」は「猛烈な、ひどい」。「forgiveness」は「許すこと、容赦」。「sin」は「(宗教・道徳上の)罪、罪悪」。「admit」は「認める、許容する」。「guilt」は「(法的・倫理的)罪、犯罪、有罪」。「appall」は「~をぞっと[ぎょっと]させる」。
「gotta」について。「have got to (do)」は「have to (do)」と同じで「しなくてはならない」の意ですが、主にアメリカでのくだけた言い方で「have」の省略形の「've」や「's」が脱落して、「go to」となり、「gotta」と綴られる場合があるようです。「hand it to 〈人〉」で「[通例have (got) toやmustを伴って]〈人〉にかぶとを脱ぐ、の優越を認める」意となります。「load」は「〈弾〉を〈銃〉に入れる、装填する」で、文全体では「かなり効果がある、十分内容が伴っている」あるいは「とても魂がこもってる」といったことを表現しているのだと思います。
「reach」は「達する、到達する」。「salvation」は先ほどにもありましたが、「魂の救済」。「halle-fucking-lujah」は「hallelujah:ハレルヤ」の真ん中に「fucking」を入れたもので、けなすように言ったのだと思います。「hallelujah」は「(望みが実現して)ありがたや」といった意味。
「haunt」は「追跡する、しつこく悩ます」。「the most」は前回の50回目のファーストキス」でもご紹介しましたが、動詞を修飾する副詞句となります。

今度はウォルトも認めているように、神父は内容のある説得をぶつけてきました。
「生と死について話し合ったことを考えていました。あなたがおっしゃったことについてです。消え去ることのない恐ろしい事を強いられた、そのあらゆるおぞましいことを、あなたが抱えてるということについてです。その重荷を幾分かでも下ろすことがあなたを楽にするのではないかと思います。戦争で行われる物事はひどいものです。殺しを命令されること。自ら生き延びるために殺すこと、他を救うために殺すこと。あなたの言うとおり。これらは私の知らない事です。しかし、私は赦しについては知っていますし、罪を懺悔して...自らの罪を受け入れて、そしてその重荷を下ろした多くの男たちを知っています。あなたよりも強い男たちです。戦争の中、ぎょっとするような事を命令され、そして今心安らかな男たちです。」
「どうやら、あんたに脱帽せねばならんな、神父。今度は銃に弾を込めてやって来たようだ。」
「ありがとうございます。」
「ひとつのことについてはあんたは正しい。俺より強い男たちが魂の救済を得たことについてだ。まったくおめでたいことだ。しかし、他では間違ってる。」
「それはなんですか、コワルスキーさん?」
「最も取り憑いて離れないのは、命令されずにやったことだ。」
神父は「about」を使ってウォルトの心に迫って行きました。一方ウォルトは神父を評価しながらも、その「about」を使って、神父の心の届かぬ、彼の深い苦悩の新事実を提示するのでした。

女の子は大学、男の子は刑務所
ウォルトは今度はタオの姉スーが黒人の不良たちにからまれているところに出くわし、助けます。
スーを車で送っていく道中、ウォルトはモン族のことを知る機会を得ます。
「モンは国じゃなく民族名よ。地域はラオス、タイ、中国。」
「そういう連中が、なぜ俺の隣に?」
「ベトナム戦争で米国に見方。米軍の撤退後、共産主義勢力の報復を逃れてアメリカに来たの。」
「だが、ここ中西部まで? 一年の半分は雪なんだぞ。ジャングル民族がツンドラ地帯へ?」
「私たちは山間民族よ。ジャングル民族は”ブカブカ・ブー!”」
「まあ、何でもいい。」
「ルーテル教会が、”この土地へ”と。」
「厄介な連中だよ。”バカは寒さにもめげず”か。」
「助かったわ。」
「君は、なかなかいい娘だ。だが君の弟は少しトロいのかね?」
「タオはすごく頭がいいのよ。ただ方向を迷ってるだけ。」
「迷ってる”トロ助”か。」
「男は女より順応性がないから。女の子は大学、男の子は刑務所。」
「なるほど。」(日本語字幕より)
「No, Hmong isn't a place. It's a people. Hmong people come from deferent parts of Laos, Thailand, and China.」
「Yeah. Well, how did you end up in my neighborhood, then? Why didn't you stay there?」
「It's a Vietnam thing. We fought on your side. And when the Americans quit, the Communists started killing all the Hmong. So we came over here.」
「Yeah. Well, I don't know how you ended up in the Midwest. There's snow on the ground six months out of the year. Why does a jungle people want to be in the great frozen tundra?」
「Hill people. We were hill people. Not jungle people. Booga-booga-booga.」
「Yeah. Whatever.」
「Blame the Lutherans. They brought us over here.」
「Everybody blames the Lutherans. Well, you'd think the cold would keep all the idiots out.」
「Thanks for the ride.」
「You know something, kid? You're all right. But what about that dimwit brother of yours? He a little slow or something?」
「Thao is actually really smart. He just doesn't know which direction to go in.」
「Yeah. Poor Toad.」
「It's really common. Hmong girls over here fit in better. The girls go to college, and the boys go to jail.」
「Yeah.」(英語字幕より)

「Hmong」は「モン族」。
「end up in~」は「「最後に~に行く」という意味があります。
「Communists」は「共産主義者」。
「the Midwest」は「the Middle west」のことで、アメリカの中西部。「out of」は「〈ある数〉の中から」の意。「frozen」は「freeze」の過去分詞形で、形容詞化したもの。「凍った、非常に寒い、極寒の」の意。「tundra」はツンドラで、通常木の生えない永久凍土の地を言う。気候分布ではロシアやカナダ以北、北極や南極にあり、高山型のツンドラは世界中に分布するようである。ウォルトの言うこの地がツンドラかどうかははっきりしませんが、少なくとも冬の長い土地であることを表現しているものと考えられます。
「hill」は「mound」と「maintain」の中間で、イギリスの用法によると610メートル以下のものを示すようです。「丘、小山、高原」などを意味します。モン族については「山岳民族」という表現も見つかりましたが、ここでは日本語字幕のように山と山の間の高原地帯に住む「山間民族」というのが「hill people」の表現に近いと思われます。
「booga-booga-booga」は申し訳ありませんが、意味不明です。
「blame」は「非難する、とがめる」。「the Lutherans」は「ルーテル教会」。「bring over」は「〈家族・人〉を(自分の住んでいる国へ、旅行・居住のため)呼び寄せる」だそうです。
「keep out」は「中に入れない、締め出す」。
「idiot」は「ばか、まぬけ」。
「ride」はここでは名詞で「乗せること」。
「dimwit」も「ばか、まぬけ」の意。
「go in」は「中に入る」のほかに、「(競技などに)参加する」もあります。
「Poor Toad」の「poor」は「哀れな、可哀想な」の意。「toad」は「ヒキガエル」ですが、「いやなやつ、哀れなやつ」の意があります。
「common」は「ありふれた」や「よく知られた」の意味があります。「fit in」は「うまくとけ込む、うまくやっていく」。「jail」は「刑務所、留置所」。

「いいえ、モンは場所じゃなくて、民族よ。モン族はラオス、タイそれに中国の違ったところから来てるわ。」
「そう。じゃ、俺の隣人に行き着いたのはなぜだ。どうしてそれらのところに留まらなかった?」
「それはベトナムのことでよ。私たちはあなた方側として戦った。で、アメリカが撤退したとき、共産主義者たちはすべてのモン族を殺し始めたの。だから私たちはここへやって来た。」
「そうか。しかしな、あんたらがこの中西部にたどり着いたわけがわからん。ここには1年に6ヶ月も地面に雪が降るんだ。ジャングルの民族が大変な極寒のツンドラにどうして来たがったんだ?」
「山間民族よ。私たちは山間民族。ジャングル民族じゃないわ。ブガブガブーガ。」
「そうか。とは言ってもだな。」
「ルーテル教会のせいよ。彼らが私たちをここへ呼び寄せたの。」
「誰もがルーテル教会を非難する。まあ、君たちは、寒さはばかなやつらを締め出すだろうって考えた。」
「車で送ってくれてありがとう。」
「分かるかな、お嬢ちゃん? 君は素敵だ。でも、君のまぬけな弟はどうだ? あいつは少しとろいことないか?」
「タオは実は本当に賢いのよ。ただどこに向かえばいいのか分からないだけよ。」
「そう。哀れな哀れ野郎か。」
「本当に特別なことじゃないの。ここのモン族の女はうまくとけ込む。女の子は大学へ行き、男の子は刑務所へ行く。」
「そうか。」
ウォルトはスーの話を聞いて、日頃の不満のひとつが消えてゆくような気がしたのではないでしょうか。朝鮮戦争で恐ろしい思い出を持つ彼の住む家の隣に、こともあろうか東洋人が住み始めたことは納得のいかないことだったでしょう。なにか常に心の平安を打ち破られる気がしたことでしょう。しかし、彼らモン族はベトナム戦争でアメリカに荷担したことで、国を追われ、必死の思いでやってきた難民だったのです。そして、アメリカという国の矛盾をまともに受けて、出口も入り口も見つからず、日夜苦悶している人たちだったのです。


ウォルトの誕生日
息子夫婦がお祝いにやって来て、電話をプレゼントするまでは良かったのですが、ウォルトに老人ホームの勧めはまずかったようです。誰からも干渉されないことを好むウォルトに、生活に干渉して勧める先が干渉だらけの場のようなところなのですから、無理ですよね。しかも、結局物質的なことばかり。
そこへスーがモン族の集まりに誘ってきます。もう隣人への疑念はなく、スーへの信頼もあり、彼女の誘いも悪いものではありませんでした。
スーの祖母らしき人が、言葉が分からぬのも手伝ってか、彼を嫌ってののしっていることすら好感がもてるウォルトのようでした。自分を腫れ物にでも触るようにしか近づかない自分の家族よりずっと、すがすがしいのかも知れません。
と、1人の男がじっとウォルトを見つめていました。彼は祈祷師でした。
彼の希望を聞き入れて、心を読んでもらうことになったウォルト。
「誰も、あなたを尊敬せず、あなたを避ける。何を食べても味がなく、人生に迷っている。過去に過ちを犯して、自分を許すことができない。人生に幸せがなく、心の安らぎもない。」(日本語字幕より)
「He says that people do not respect you. They don't even wanna look at you. He says the way you live, your food has no flavor. You're worried about your life. You made a mistake in your past life, like a mistake that you did... you're not satisfied with. He says you have no happiness in your life. It's like you're not at peace.」(英語字幕より)

「respect」は「尊敬する、敬う」。「flavor」は「趣、味わい」。「worry」は「心配する」。「satisfy」は「満足させる、〈疑念・心配など〉を晴らす、〈異論・疑問など〉に十分答える」。

「彼が言うには、人はあなたを尊敬していない。彼らはあなたを見ることさえ避けている。さらには、あなたの生き方だと、食事に味わいがない。あなたは人生を憂いている。過去に過ちを犯し、答えを見つけられないでいる。そして、人生に幸せがない。それは安らぎがないようである。」

ウォルトの人生をそのまま、飾ることもなく、そして容赦なく語られました。しかし、神父のことばより、よほど自分の心に響くものがあったのかも知れません。何も言わなくとも自分の苦悩をはっきりと見る者がいると。思わずウォルトは寄り添って生きているモン族の人たちを見つめます。彼らはまた古き良きものを守ろうとしている人たちでもありました。
ウォルトはモン族の人たちに親近感を覚えたことを言葉にしています。
「どうにもならん身内より、ここの連中の方が身近に思える。まったく情けない。誕生日おめでとう。」(日本語字幕より)
「God, I've got more in common with these gooks than I do my own spoilt rotten family. Jesus Christ. Happy birthday.」(英語字幕より)

「have (got) O in common with~」は、「〔~と〕共通点...ある」となり、《Oはsomething, anything, nothing, muchなどで度合いを示す》とありました。こんな表現もあったのですね。「gook」は「きたないもの」や「ベトコン」に「まぬけ」などの意味がありますが、ここでは「外国人、(特に)東洋人」の意と考えられます。「spoilt」は「spoil」の過去・過去分詞形で形容詞化したもののようです。「(甘やかされて)増長した」の意。「rotten」は「だめな、不快な、いやな」の意。「Jesus Christ」は「イエス・キリスト」のことですが、「ちきしょう!、くそっ!」と訳され、驚き・狼狽などを表します。そして「God!」よりも強い表現となるようです。

「神よ、甘えてだめな家族より、こいつら東洋人の方がわかり合える。まったく。誕生日おめでとう。」

タオの奉仕とウォルトに忍び寄る影
ある日ウォルトが家に帰ってくると、タオが母親とスーに連れられて家の前に立っていました。
車を盗もうとしたお詫びにタオがウォルトの家で働くと言うのです。ウォルトはしぶしぶ受け入れるのでした。
しかしこれは、タオの家族もウォルトを認めているということでもあるようです。
ちょっとした思いつきで、ウォルトはタオに向かいの家の修復をさせます。タオはやり甲斐を感じたようでしたが、最後の日はウォルトの体調が悪く、休日となってしまいました。
ウォルトは最近咳をすると血が出ていました。診断結果は映像からは分からないのですが、ウォルトから息子への気まずい電話の様子でその深刻さが推し量られるのでした。

蛇口の修理で
その後も、ウォルトとタオの交流は続いていました。しかし、ストリート・ギャングたちはまだタオをつけねらって様子をうかがっていました。
タオが蛇口の修復を頼んだのをきっかけに、タオはウォルトの工具のコレクションに感心します。そして、ウォルトもタオに最初の工具として自分の工具の中から3つを与えるのでした。
ここで、ウォルトはタオがグラントリノを狙ったのはストリートギャングたちから強制されたテストだったと知りました。
ウォルトが水道管の作業をしているとき、聞き慣れぬフレーズを口にしてました。
「これじゃ、死んじまう。」(日本語字幕より)
「Jesus. For the love of Pete.」
「What?」(英語字幕より)

「For the love of Pete:ビートの愛のために」(?)です。「for the love of God」は辞書に例文がありました。
「For the love of God, help me!:お願いだから助けてください。」
おそらく「Pete」は「聖ペテロ:the catholic Saint Peter」に間違いないだろうとのことです。「Pete」は男の名前「Peter:ピーター」の愛称(ピート)と辞書にありました。つまり、「for the love of Peter」や「for the love of God」ということのようなのですが、これらの言葉が神を冒涜すると考えられた時代に、遠回しの表現として代わりに作られたフレーズのようです。「I am frustrated with this situation.」が意味合いで、「この状況に失望している」となります。つまり「苛立ち、怒り」を表しています。今では、先ほどの「for the love of God」の方が一般的なようです。ウォルトのような古い人間に使われているのかも知れません。タオが「What?」と聞き慣れぬフレーズにびっくりしてます。ウォルトは教会嫌いなのですが、神様は信じてるようですね。

冷凍庫
「これだ。俺が重たい方を持って引き上げる。お前は下から押して、階段を上げてくれ。」
「僕が上へ。」
「俺が引き上げる。」
「僕がやるよ。重そうだ。」
「足腰は弱ってない。」
「それがイヤなら僕は帰る。」
「いいか。」
「じいさん、僕の手を借りたいんだろ? 僕を帰らせたいのか?」
「分かったよ。お前が上だ。俺が押し上げる。手を滑らすなよ。俺が押し潰されちまう。」
「そいつは名案だ。」(日本語字幕より)
「Here it is. Here's the deal. I take the top because that's the heaviest. I pull on that, and you stand right back here and you push and help me push it up each step. Just like that.」
「Then let me take the top.」
「No, no, I've got the top.」
「Really, I'll take the top. It looks heavy.」
「Look, I'm not crippled. I've got the top.」
「If you don't let me take the top, I ain't helping.」
「Now, listen to me, zipperhead...」
「No, you listen, old man. I'm here because you needed help. So it's either top or I'm out of here.」
「All right. You take the top, and I'll push. Just don't let it slip out of your little-girl hands and crush me.」
「Don't give me any ideas, now.」(英語字幕より)

「deal」は「商取引、契約」ですが、ここでは仕事の分担の決定を言っているようです。「heaviest」は「heavy:重い」の最上級。「pull on」は単純に「引っ張る」でよいようです。
「cripple」は[通例be ~d]で「〈人が〉手足が不自由になる」。
「zipperhead」はアメリカで《侮蔑》的に「東洋系の人」を言うようです。”英語スラング辞典”によりますと、「ZIP」は「東洋人(特にベトナム人)」となるようです。それは軍隊用語として紹介されています。「zero inteligence potencial」の頭文字からとなっています。1900年代半ばから現在となっており、ベトナム戦争頃からのものと言えそうです。
「crush」は「押し潰す」。

「こいつだ。仕事の手分けはこうだ。俺が上側を持つ。重たい方だからな。俺が引っ張るから、お前はここの真後ろに立って、押すんだ。それで一段ごとに押し上げてくれ。そんな感じだ。」
「じゃ、僕に上側をさせてくれ。」
「いや、いや。俺が上だ。」
「まじでさ、俺が上をするよ。重そうだよ。」
「いいか、手足は大丈夫だ。俺が上だ。」
「もし上を任せてくれないなら、手伝わないよ。」
「いいから、聞け、東洋野郎...」
「いいや、聞くんだじいさん。手伝いが必要だから、俺はここにいるんだろ。上か、さもなきゃ、ここを出るかだ。」
「分かった。お前が上をやれ。俺が押す。お前の小さい娘みたいな手から滑らせて、俺を潰すんじゃないぞ。」
「まあ、そんないいアイデア教えないでくれ。」
タオもいいところありますね。体がどうのこうのより、心配だからどうのこうのより、脅しをかけたので、ウォルトも引き下がることができたようです。ところで、売りに出すために引き上げた冷凍庫は、結局タオに売ることになり、そのままタオの家に直行しました。

男らしい会話
ウォルトはタオの将来を見据えて、大学に行かせたいと考えたようです。それには今すぐにでも働いて学費を稼ぐべきだとも。だが、ウォルトはタオには足らないものがあると考えているようです。しかし、それを彼に体現させる方法は意外なものでした。
「いいね! ポーランドとイエローか。」
「元気か? イカれイタ公。」
「せっかくのいい日が、これで台ナシだ。」
「目の悪い客の釣り銭でもごまかす気だったのか?」
「そいつは?」
「隣家の腰抜け坊やを、ちっとは男らしくしたくてね。どうだ? これが男同士の会話だ。」
「それが?」
「聞いたろ? 店に入り直して、男らしい口をきくんだ。いいな? いいから表に出ろ。そして戻って来い。すまんな。」
「元気か? イカれイタ公。」
「その黄色いチンポコを吹っ飛ばすぞ!」
「そりゃ、やりすぎだ。落ち着け。そんなあいさつはないだろ?」
「あんたも、そう言った。」
「初めての店でタメ口をきくな。運悪く血の気の多い相手だったら、ぶっ殺されてるぞ。」
「じゃ、なんて?」
「当たり障りなく、”ハイ”とか”ハロー”と。」
「”時間があればヘアカット頼めます?” 」
「ごく自然の感じで。」
「建設の仕事の話でもいいし、恋人とか車への文句。」
「”ブレーキを直させたら、ボラれて、ブチ切れたぜ!”」
「その場にいない奴の悪口を言うんだ。”ボスに残業を言いつけられて、頭に来た”とか。」
「”女房ときたら、店のクーポンが使えなかったと2時間グチを聞かされ、俺が野球を見始めたら「あんたは冷淡だ」”」
「もう一度やり直せ。哲学を語れとは言ってない。」
「でも僕、仕事もなければ、車も恋人も持ってない。」
「やっぱ、ぶっ殺しゃよかった。」
「いいから、もう一度最初からやり直せ。”仕事がない”なんて話はするな。車や恋人がないとか、未来も肝っ玉もないなんてことも言うな。いいな?」
「忙しくなきゃ、ヘアカット頼めます? イカれイタ公の髪切り屋。男だけの現場でケツまでクタクタだ。」
「参った。」(日本語字幕より)
「Perfect. A Polack and a chink.」
「How you doing, Martin, you crazy Italian prick?」
「You cheap bastard, I should've known you'd come in. I was having such a pleasant day.」
「What'd you do, Jew some poor blind guy out of his money? Gave him the wrong change?」
「Who's the Nip?」
「Oh, he's a pussy kid from next door. I'm just trying to man him up a lilt bit.」
「Mm.」
「You see, kid? Now, that's how guys talk to one another.」
「They do?」
「What, you got shit in your ears? Now go on out and come back in, and talk to him like a man. Like a real man.」
「Come on, Walt.」
「Come on. Get your ass out of here. And come on back now. Sorry about this.」
「It's okay.」
「What's up, you old Italian prick?」
「Get out of my shop before I blow your head off...you goddamn dick-smoking gook!」
「Jesus Christ. Oh, shit. Take it easy. Take it easy. What the hell are you doing? Have you lost your mind?」
「But that's what you said. That what you said men say.」
「You don't just come in and insult the man in his shop. You don't do that. What happens if you meet some stranger and get the wrong one? He's gonna blow your gook head right off.」
「What should I have said, then?」
「Yeah, kid, why don't you start with "Hi" or "Hello"?」
「Yeah, just come in and say: "Sir, I'd like a haircut, if you have time."」
「Yeah, be polite, but don't kiss ass.」
「You could talk about a construction job you just came from and bitch about your girlfriend and your car.」
「Son of a bitch, I just got my brakes fixed, and those sons of bitches really nailed me. I mean, they screwed me right in the ass.」
「Don't swear at the guy. Just talk about people who are not in the room. You could bitch about your boss making you work overtime when it's bowling night.」
「Right. Or my old lady bitches for two goddamn hours about how they don't take expired coupons at the grocery store and the minute I turn on the game, she stars crying how we never talk.」
「You see? Now go out, come back and talk to him. And it ain't rocket science, for chrissake.」
「Yeah, but I don't have a job, a car or a girlfriend.」
「Jesus. I should've blown his head off when I had the chance.」
「Yeah, Maybe so. Now, okay, I want you to turn around and go outside and come back, and don't talk about having no job, no car, no girlfriend, no future, no dick. Okay? Just turn around and go.」
「Excuse me, sir. I need a haircut, if you ain't too busy. You old Italian son-of-a-bitch prick barber. Boy, does my ass hurt from all the guys at my construction job.」
「Fuck me.」(英語字幕より)

「Polack」は「ポーランド系の人」。「chink」は”英語スラング辞典”によりますと、「1.女性性器。2.モンゴロイド人種の人、東洋人、《通例軽蔑的》中国人、《最近は軽蔑的》ベトナム人」とありました。
「prick」は、これまた”英語スラング辞典”によりますと、「1.ペニス。2.とんま、嫌な男。」となってました。また、侮辱の呼び掛け語でも使用するとして、「What did you do that for, you stupid prick?」という例文もありました。
「cheap」は「けちくさい、卑しい」の意味があります。「bastard」は「《侮蔑》私生児、庶子(ショシ:めかけの子)」。「pleasant」は「楽しい、愉快な」。
「Jew」は名詞として「ユダヤ人、けちで強欲な人、ユダヤ人のような」の意があり、ここでは動詞として「強欲な取引をする」。「change」はここでは「つり銭」。「out of」には「を奪って、奪われて」の意味があります。
「Nip」は、これも”英語スラング辞典”によりますと、「Nippon」から「《軽蔑的ニックネーム》日本人」。また、ここでは関係ないようですが、「nipple」から「乳頭」の意もあるようです。
「pussy」ここでは「めめしい男」のようです。「man up」は残念ながら適当な意味を探すことができませんでした。むしろ、日本語風に「man:男」と「up:上げる」ですから、「男らしさを上げる、男らしくする」ように考えることもできなくないですが。
「尻」を意味する「ass」は「ひどい目」の意味もありますが、[one's ass]で「自身(oneself)」の意味もあるようです。
「What's up?」は後に(with you)が付くこともあるようで、「やあ、どうしたんだ」の意味があります。これは「What's the matter with you?」と同じ感じ。また、「what's new」とも同じように使われるようで、「やあ、変わったことないかい」や「どうしてる」の意味になります。
「goddamn」は「60セカンズ」(2006年9月)で少しご紹介しましたように、ののしりや怒りを表しているようです。印象ではやはり最近はあまり聞かなくなったと思います。「Goddamn」は「God」と「damn」が引っ付いた言葉となってます。「damn」は[通例 be ~ed]の形で「〈人が〉(神に)永遠に罰せられる、地獄に落とされる」とあります。「God damn it!」は「神がそれをのろわれ給わんことを!」で、「God」は省かれることが多いようです。すると「Damn it!:しまった!」となります。「dick-smoking」は単語として見つかりませんでした。そしてまたしても”英語スラング辞典”によりますと、「dick」は「ペニス」で、「prick」の”押韻俗語”(意味は知りませんが、”ick”のところが同じですね)となってました。「smoke」は「女と性交する、マリファナを吸う」などでした。「gook」は先にもありましたが、「東洋人」ぐらいの意味。
「take it easy」には「(なだめて)興奮するな、そうむきになるなよ、無茶をするなよ」という意味がありました。
「insult」は「侮辱する」。
「polite」は「丁寧な、礼儀正しい」。「kiss ass」は「kiss O's ass」で「〈人の〉機嫌をとる、〈人〉にごまをする、へいこらする」。
「construction」は「建設(作業)、建造、建築工事」
「bitch」は「不平を言う」。
「nail」は「〈相手〉を破る、〈物〉を盗む、〈男が〉と寝る」などがありました。”英語スラング辞典”でも「性交する」意がありました。「screw」は名詞としては「ネジ」です。動詞としては「ネジで固定する」なんですが、良くない意味では、「[通例be ~ed]〈人が〉だまされる、だまし取られる」がありました。また、「セックスをする」というのもありました。これら「nail」と「screw」は「fuck」と同じように、「性交する」意味合いから、受動態で「犯される」イメージが生まれたのだろうと思います。そして「ひどい扱いを受けた」意味が生じているのだろうと思います。
「swear」は「誓う」という意味がありますが、自動詞として「ののしる、乱暴な口をきく〔at〕」という意味もあります。「boss」は「ボス」として日本語にも使われていますね。「上司、親方、監督」などです。「bowling」は「ボウリング」です。「たいくつ」の方は「boring」です。
「expire」は「期限が切れて無効となる」。「coupon」は「クーポン」。「grocery」は「食料雑貨」。
「for chrissake」は「for Christ's sake:後生だから」」。
「turn around」は「ぐるりと向きを変える」意から、「好転する」、「意見・態度を変える」意味を持っているようです。”改善に向かう”意味合いがあるようです。
「hurt」は人体に与えられる傷や痛みを言うようです。戦いでの負傷には「wond」、物の損傷には「damage」を用いるとあります。意味は「傷つける」、「[損害、打撃]を与える」、「痛みを与える」などです。
「fuck me」はそのままでは辞書で見つかりませんでした。しかし、いろいろ解釈されるとも言えます。単刀直入に「やってくれ」もなかなかと思いますが、ここは「やられた」でいいのかなと思います。

「やった。ポーランドとベトナムか。」
「どうだい、マーチン。イカれイタリアとんま野郎。」
「ちんけなはみ出し野郎め。来ると分かってりゃな。いい日だというのに。」
「何を企んでた。哀れなめくらから金を騙し取るんだろ? つり銭でもごまかそうとしてやがったか?」
「その日本人は誰だ?」
「ああ、となりの女々しい坊やだ。この子をちょいと男らしくしようとしてるんだ。」
「ほう。」
「見てただろ? じゃあ、これが男が話す方法だ。」
「ほんとに?」
「なに? 耳にクソでも詰まってたのか? さあ一度出て入って来い。やつに男らしく話すんだ。真の男らしくな。」
「聞いてよ、ウォルト。」
「聞け。さっさと出ろ。そして、入ってくるんだ。すまないな。」
「かまわんさ。」
「やあ、どうだい、老いぼれイタリアとんま野郎?」
「俺の店から出ていけ、さもないと頭ぶっ飛ばすぞ。このまったくのバカチン東洋野郎め。」
「なんてこった。くそ。無茶するなよ。おさめて。おまえいったい何やってんだ? 気でも狂ったのか?」
「でも、これがあんたが言ったことじゃないか。これが男のあいさつだって言っただろ。」
「おまえはただ入って来て、店の主人を侮辱しただけだ。そんなことはするな。おまえ、もし見知らぬ人間で、違ったやつだったらどうなったと思う? おまえの東洋頭なんぞぶち抜かれるところだぞ。」
「じゃ、なんて言えば良かったのさ?」
「そうだ、ぼうず、”ハイ”とか”ハロー”て言えよ。」
「そうだ、入って来て、”主人、ヘアーカットしたいんだ。時間あるかな”。」
「そうだ、丁寧にな。が、へいこらするんじゃないぞ。」
「今行って来た建築工事のことなんか話すんだ。ガールフレンドや車のグチを言うのもいい。」
「あの野郎、ブレーキを直させたら、あいつらまったくひでぇことしやがる。早い話が、ケツ掘られたってことよ。」
「相手をけなすんじゃない。部屋にいないやつのことを話すんだ。ボウリングの夜に残業を言いつけた上司のグチなんかがいいんだ。」
「そうさ。俺の古女房なんざ、まったく2時間もだぜ、食料品店で、期限切れのクーポンを受け取らなかったとグチってたくせに、俺がゲームを始めるやいなや、どんなに会話がないか泣きわめくときたもんだ。」
「分かったろ? さあ出て、戻って来て、やつに話しかけるんだ。ロケット科学をやれって言うんじゃないんだ。頼むぜ。」
「ああ、でも仕事ないし、車も、ガールフレンドだって。」
「なんだと。あんとき頭ぶっ飛ばしときゃ良かった。」
「ああ、たぶんな。さあ、いいな、ちったあ考えろ。一旦出て戻ってくるんだ。無職だとか、車ないとか、未来がないとか、エッチご無沙汰とか言うんじゃないぞ。いいか? うまく考えて、行け。」
「すみません、ご主人。ヘアーカットしたいんだ。忙しくないかな。この老いぼれイタリアのくそポコチン野郎。工事現場の野郎どものおかげでケツの穴がいてぇや。」
「やられた。」
公衆の面前では御法度のスラングも、なんだか愛情がこもってて暖かい感じに聞こえてきました。どうも荒っぽい会話って苦手で、つまらないギャグを言ってる方がまだましといいますか。しかし、このシーンを見た今なら男同士の会話ってやつもいいかなって思えますね。

ウォルトのジレンマ
この後、タオは無事就職しました。なんだか、明るい未来が見えてきた気がしたものです。しかし、それもストリート・ギャングたちに見つかるまででした。片を付けようと、メンバーの1人をこらしめたウォルトでしたが、彼らは最も弱い者たちにねらいをつけるのでした。タオの家に銃弾をあびせ、スーを暴行したのでした。
翌日復讐に胸を焦がしてはやるタオをしずませ、ウォルトは夕方の4時に来るようタオに言い聞かせます。
やがて4時になり、タオはウォルトの家にやって来るのですが...

ウォルトが挑んだものは、タオとスーへの強いメッセージであり、亡き妻への懺悔だったと思います。その意味で、私は、彼の取った方法にいろいろな理由があったと思いますが、結果はどうあれ「どう生きるか」というメッセージだったと思いたいです。

余談ですが、物語では、戦争そのものに触れることはありません。しかし、朝鮮戦争は、1950年から1953年の3年間で、ベトナム戦争の15年に匹敵する死者が出た凄惨な戦争だったそうです。死者は北朝鮮250万人、韓国133万人でそのほとんどが一般市民。アメリカ軍の死者は6万3千人、中国は100万人と言われています。ベトナム戦争と同様、朝鮮半島を舞台にした、アメリカを中心とした連合軍と中国・ソ連の代理戦争の形でした。この戦争はアコーデオン戦争とも言われたそうです。当初軍事的に有利だった北側がソウルまで進んだり、アメリカ軍が盛り返して、北の中国国境まで迫り、「統一間近」まであと少しのところまでになった。しかし、中国の100万人とも言われた有志軍(実質中国軍)の反撃で38度線まで盛り返すなど、激しい戦いが続いたようです。大国の思惑がからんで、朝鮮は大きな犠牲を払って、今に続く情勢がこのとき始まったのです。
また、ベトナム戦争では、ラオス国内を走る北ベトナム軍の物資輸送ルートをたたくため、ラオスの山岳部にいたモン族に当時のアメリカが着目して訓練し兵隊を組織したそうです。しかし、アメリカ軍が撤退を始めるとアメリカ軍はモン族を見捨てたとのことです。その結果20万人のモン族が戦死したとあります。戦後北ベトナム軍やラオス愛国戦線と戦ったモン族は帰る地がなくなり、タイに難民キャンプが作られ30万人ほどが一時暮らした。そして、一部のモン族、10数万人がアメリカに移住したそうである。
ちなみに、クリント・イーストウッド監督は、モン族の登場人物を実際のモン族の人たちの中からキャストを選んだそうです。
私は普段こうした背景を辿ることはありませんが、セリフを読むにあたりどうしても調べないわけにはいきませんでした。そして、多くのことを学ぶことになりました。
物語に戻ると、朝鮮戦争の時、ウォルトは数少ない生還者だったのでしょう。しかし、その記憶は私たちには計り知れない苦悩だったと思います。そして、なんの因果か多くのアジア人が近隣に住み着き始めていました。かれら、アジア人の姿は、ウォルトの沈痛な記憶を思い起こさせる忌々しい存在に映ったことでしょう。

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