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「Live dangerously, take the whole day.」「I just haven't had the chance to do it for anyone.」(「ローマの休日」より)

MY DVD:「ROMAN Holiday:ローマの休日(1953年製作)」発売元:パラマウント ホームエンタテインメント ジャパン株式会社 PDAA-202

とてもとても愛らしい作品です。いいものに触れて、しばし心を癒しましょう。
冒頭で蛇足というもの変ですが、この映画でオードリー・ヘプバーンは、初演で、主演を演じ、アカデミー賞の主演女優賞の栄誉に輝いています。また、この作品は他に脚本賞、衣装デザイン賞も得ています。
ついでに、当時オードリーは舞台には立ってましたが、映画では無名だったこともあり、映画のタイトルは『グレゴリー・ペックの「ローマの休日」』といった感じだったそうですが、グレゴリーがオードリーの才能を認め、オードリーの名前を自分と同等に出すようにさせたことは、良く知られたお話のようです。実際、製作中から、オードリーは関係者の間で評判だったそうです。

物語は、ある国の麗しい王女のヨーロッパ各国を歴訪する報道ニュースから始まりますが、実はまだ無邪気さの残るアン王女にとってはこの公務は苦痛に満ちていたのでした。自分を抑えられず興奮したために睡眠薬を打たれたにも関わらず、夜外に飛び出す王女は道ばたのベンチに寝込んでしまいます。そこへ通りかかったアメリカ人新聞記者のジョーはそれと知らず彼女を自分のアパートに泊めるはめに。
しかし、次の日、きらめくふたりのローマの休日が始まるのでした。

まずは愛らしくも、おてんばな王女の就寝支度の場面から。
「いやなネグリジェ。ネグリジェは嫌い。下着も。」
「ご立派なお品ばかり。」
「私はお婆さんじゃない。パジャマで寝たいわ。上衣だけで。何も着ずに寝る人もいるのよ。」
「さような事は存じません。」(日本語字幕より)
「I hate this nightgown. I hate all my nightgowns, and I hate all my underwear too.」
「My dear, you have lovely things.」
「But I'm not 200 years old. Why can't I sleep in pyjamas?」
「Pyjamas!」
「Just the top part. Did you know there are people who sleep with absolutely nothing on?」
「I rejoice to say I did not.」(英語字幕より)
「ネグリジェ」はフランス語なんですね。英語で「nightgown」はなんだか男物に聞こえてしまいます。
「pyjama」は米国風で、イギリス風の「pajama」。ここで面白いのは、パジャマは元々インドのヒンズー語で、脚を意味する「pa」と着物を意味する「jama」からできたズボンだけを意味する言葉。ヨーロッパに入ってから、上衣が付け加えられたとされています。
それなのに、アン王女は、パジャマの上衣だけを着て寝たいと言ってます。パジャマの発展形と申しましょうか、本来の言葉の意味から外れると申しましょうか。知ってか知らずか、とにかく無邪気と言えども、とても良い思いつきとは言えません。後でこの願望のためにちょいとうろたえることになりますね。
「このナイトガウンは嫌い。ナイトガウンは全部嫌い。下着も全部嫌い。」
「王女さま、あなたはすてきな品々をお持ちですよ。」
「でも、私は200才の年寄りじゃないわ。どうして、パジャマで寝ちゃだめなの?」
「パジャマ!」
「それも上衣だけで。まったく何も身につけないで寝る人たちがいるのを知ってたでしょ?」
「知らないとお答えすることを嬉しく思います。」

王女さまは子供っぽいだけなのかなと思いきや、彼女の痛々しい叫びから、悩みがとても深刻であることが分かります。
お世話役の伯爵夫人の職務的な言葉使いが、彼女の心の痛みを強めているかのように映ります。
「一人で安らかに死なせて。」(日本語字幕より)
「I don't want him. Please let me die in peace.」(英語字幕より)
「ドクターは必要ないわ。どうか安らかに死なせて。」

ただ、救いは先生でした。さすがにこの方は良い先生みたいで。
「ちょっとお加減を拝見。」
「バナクホーフェン先生、恥ずかしいわ。」
「涙は正常な現象です。」
「明日の記者会見に差し支えると困る。」
「大丈夫。明日は落ちつき払って、会釈をし、貿易を促進して...」
「ほらまた、何かお薬を。」
「袖をまくって。」
「それは?」
「眠り薬です。神経をしずめ、気持ちを明るくします。新薬です。」
「効果ないわ。」
「もう少したつと効きますから、安静に。」
「灯を全部消さないで。」
「当分、気ままになさる事がお体のためです。」
「ありがとう。」(日本語字幕より)
「I'll only disturb Your Royal Highness a moment.」
「I'm very ashamed, Doctor. Suddenly I was crying.」
「To cry is perfectly normal.」
「It's important she be calm and relaxed for the press conference.」
「Don't worry, Doctor, I'll be calm and relaxed. I'll bow and I'll smile, I'll improve trade relations and I'll...」
「There she goes again. Give her something, please.」
「Uncover her arm, please.」
「What's that?」
「Sleep and calm. This will relax you and make you feel a happy.It's a new drug, quite harmless. There.」
「I don't feel any different.」
「You will. It may take a little time to take Hold. Just now, lie back.」
「Can I keep just one light on?」
「Of course. The best thing I know is to do exactly what you wish for a while.」
「Thank you, Doctor.」(英語字幕より)
「Highness」で王族に対する敬称。「Her Highness」で妃殿下。直接呼びかける時は「Your Highness」となるようですが、彼女が王の実の娘だからでしょうか、王の血をひくという「Royal」もつけるようですね。
ドクターはここでは、日本語字幕のように「お加減を」とは言わず、医者なんか必要ないと言う王女を刺激しないような、さりげない言い方を選んだようです。また、泣くこともまったく正常なことだと言ってあげてます。
しかし、将軍のおじいさんはやっぱり厳格な方で、ここで求められている父親のようなやさしい気持ちにはなれないようです。王女より記者会見を心配しています。伯爵夫人も興奮する王女に薬をと、またまた事を収めることばかり。
ハッピーになると言われて注射された王女は、「なにも違いを感じない」と「different」を使って言います。解決・改善を目指すとき「違い」という結果を求める言い方をすることは、「エイリアン2」のときにご紹介したとおりです。
「take hold」は「定着する・確立する」の意。「lie back」には「(休むために)あお向けになる」という意味があります。
「電灯ひとつは点けていてもかわまないですか」というかわいい要求に、ドクターもやさしく応えています。「しばらくは、好きなことをするがいい」と。しかし、それは鎮静剤が効いてくるまで、寝室を出ないという前提だったはずです。
「王女さま、ちょっとお邪魔しますね。」
「とても恥ずかしいです、ドクター。突然泣き出してしまって。」
「泣くことは、まったく正常なことですよ。」
「記者会見では彼女が落ち着いて、リラックスしていることが大切なんです。」
「心配しないで、ドクター。落ち着いて、リラックスしますわ。うやうやしくお辞儀をし、微笑みます。貿易関係を促進させ、そして私は...」
「ほら、また彼女は。なにか与えて下さい、どうか。」
「袖をまくってください。」
「それはなに?」
「睡眠と落ち着きのためです。これでリラックスして、良い気持ちになりますよ。新しい薬なんです。害がないんですよ。ほら。」
「少しも違いを感じないわ。」
「感じるようになります。効き目が出るまでには少し時間がかかるかも知れません。さあ、あお向けになって。」
「電灯をたったひとつだけ点けていてもかまいません?」
「もちろん。しばらくは、あなたがまさに願っていることをするのが、最もいいことだと私は思います。」
「ありがとう。」

アン王女は、ドクターの言葉に気分を良くしたのはいいのですが、外から聞こえる音楽の誘惑に勝てず、城を飛び出してしまいます。
オードリー・ヘプバーン演じるアン王女は、王女の職務は行っているものの、まだ無邪気な子供のようなまま彷徨っている感じ。
一方、グレゴリー・ペック演じるアメリカ人記者ジョー・ブラドリーも、アパートの家賃を溜めながら仲間とカードゲームを楽しむ気ままな少年のよう。しかし、そんな二人だったがゆえに、互いの出会いを美しいものにしていったのかも知れません。
実は、二人は何度も出会います。
というのは、まずはアン王女が睡眠薬が効いた状態で、道端でジョーと。
次に、アン王女がやっと目覚めて、ジョーの部屋の中でジョーと。アン王女は、自らを「アーニャ」とだけ名乗る。
アン王女がジョーのアパートを出た直後、お金を借りるために戻ったときにジョーと。
アン王女を尾行していたジョーが、偶然を装ってアン王女と。カフェでアン王女は学校から抜け出したとして、ジョーは化学品の会社員として。
最後に記者会見で、ふたりが真の姿で、王女と記者として。

夜、道端で。
ふたりが出会ったとき、まだお互いに見知らぬ同士。しかも、アン王女は儀礼的挨拶を朦朧とした意識の中で繰り返しています。
その中のことばに、「Charmed」というのがありました。ジョーもこれに応じて、「Charmed too.」と言っています。
これは紹介されたときの上品な挨拶で、「お会いできて光栄です」といった意味になるようです。
眠りの中から起こされたアン王女はある詩を紹介します。混沌とした意識の時に聞こえた、ジョーの呼びかけは、救いの声に聞こえたのかも知れませんね。その心情とうまく合致した詩と言えます。また、アン王女独特の控え目な感情表現とも言え、また彼女の感性とセンスの良さを示したものとも言えそうです。この詩は、あとでジョーの部屋でキーツかシェリーかで言い合うものと違って、オリジナルが分かってないものだそうです。この映画のために創作されたものではないかとも言われてます。
「我れ死して埋められるとき、君がみ声聞かば、大地のもとを野辺の我が心喜びに震えん。」(日本語吹き替えより)
「If I were dead and buried and I heard your voice, beneath the sod my heart of dust would still rejoice.」(英語字幕より)
「beneath」は「下に、真下に」という意味。「sod」は「芝生、草地、地面」といった意。「beneath the sod」に似た表現で、「under the sod」で、「芝生の下に」の他に、「(墓に)葬られて、草葉の陰で」という意味があります。「dust」は「ちり」ですが、「遺骨、なきがら」の意味もあり、亡くなって土に戻った「ちり」も意味します。再び「rejoice」が出てきました。「喜ぶ」という動詞です。
「もし私が死んで埋められたとき、あなたの声を聞けば、草地の下、ちりとなった私の心は、それでも喜ばすにはいられないでしょう。」

同じ夜、ジョー・ブラドリーの部屋。
アン王女はまだ酔っぱらったような意識のまま。部屋に入ったときのセリフで、アン王女の暮らしぶりが分かるというもの。狭くて小さな部屋は見たことがないのですね。それに終始、人を疑って怖がることがありません。はっきりしない意識の状態だからこそ、彼女の人間性が描かれている場面とも言えそうです。どうせネグリジェしかないのだから、バラの柄のものを頼むと、パジャマが出てきて、嬉しい驚きを示すアン王女。一方ジョーはけなされたと勘違いするところは、二人の行き違いを象徴していて面白いですね。
唐突に、服を着ているときでさえ、男性とふたりきりなどなかったのに、服を脱ごうとしているといる自分に気づきます。しかし、不思議と平気のようだと話します。ここでも、お嬢様育ちというより、彼女の人を信用してやまないおおらかさのようなものが感じられます。
また、字幕では分かりにくいのですが、長椅子(couch)で寝るよう指示されて、雪の長椅子(couch)の詩を紹介するアン王女。彼女が詩を介して世界の広がりを感じていることが分かります。そんな彼女も、まだ知らぬ次の日の午後、自分の五感で世界を感じ、ジョーという人間を知ることになるわけです。そして、その詩の作者をキーツと言い張るアン王女。彼女の意志の強さも垣間見られます。
「ここはエレベーター?」
「僕の部屋だ。」
「どうも失礼。目まいがひどくなって... ここに寝てよくて?」
「仕方がない。」
「バラの蕾のついた、絹のネグリジェを。」
「これで我慢してくれ。」
「パジャマだわ。」
「ネグリジェは着ないんでね。」
「服をぬぐのを手伝って。」
「あとは自分でしたまえ。」
「私にも。」
「ダメだ。君は...」
「珍しい事だわ。服を着た時も、男性と二人きりはなかった。それが、ぬいだ時に。でも不足はないわ。あなたは?」
「コーヒーを飲みに行く。君は寝たまえ。こっちだ。」
「ごていねいに。」
「これがパジャマだ。着て寝るものだよ。着たら長椅子で寝るんだ。ベッドでも椅子でもなく。」
「私の好きな詩は...」
「もう拝聴した。」
「アレトゥーサは身を起こしぬ。山をおおう雪の寝床より。キーツ。」
「シェリーだ。詩よりパジャマをさっさと着たまえ。」
「キーツ。」
「シェリーだ。10分で戻る。」
「キーツよ。退ってよろしい。」
「どうも。」(日本語字幕より)
「Is this the elevator?」
「It's my room!」
「I'm terribly sorry to mention it, but the dizziness is getting worse. Can I sleep here?」
「That's the general idea.」
「Can I have a silk nightgown with rosebuds on it?」
「I'm afraid you'll have to rough it tonight. In these.」
「Pyjamas.」
「Sorry, honey, I haven't worn a nightgown in years.」
「Will you help me get undressed, please?」
「OK. There you are. You can handle the rest.」
「May I have some?」
「No! Now, look!」
「This is very unusual. I've never been alone with a man before, even with my dress on. With my dress off, it's most unusual. I don't seem to mind. Do you?」
「I think I'll go out for a cup of coffee. You'd better get to sleep. Oh, no. On this one.」
「You're terribly nice.」
「Hey, come here. These are pyjamas, they're to sleep in. You're to climb into them. Understand?」
「Thank you.」
「And you sleep on the couch. Not on the bed, on the couch. Is that clear?」
「Do you know my favourite poem?」
「You've already recited it.」
「"Arethusa arose From her couch of snows In the Acroceraunian Mountains." Keats.」
「Shelley. Keep you mind off the poetry and on the pyjamas. You'll be fine.」
「Keats.」
「Shelley. I'll be back in about ten minutes.」
「Keats. You have my permission to withdraw.」
「Thank you very much.」(英語字幕より)
セリフの中だけですが、ネグリジェに「バラの蕾」の柄のものが何度も出てきますが、英語の「rosebud:バラのつぼみ」には、「美しい少女、年ごろの少女、初めて社交界に出る少女」という意味もあるようです。
「rough it」で「〈キャンプなどで〉不便な生活をする」という意味。
「climb into」には「(急いで、努力して)〈服などを〉着る」という意味があります。
寝ることもできる「長椅子」で寝なさいと言われて、アン王女は「私の好きな詩をご存じ?」と言います。ジョーは「recite」という言葉を使って反論しています。「recite」は「〈聴衆などに向かって詩などを〉暗唱・朗読する」こと。これは僕らの知っている「リサイタル」と同じ語源の言葉ですよね。つまり、「君はもうすでにリサイタルしたよ」って言ってます。だから、日本語字幕では「拝聴した」となっていたのですね。ユーモアのあるセリフです。
さて、詩のことについては、ジョーの方が正しいそうです。「パーシー・ビッシュ・シェリー:Percy Bysshe Shelley( 1792-1822 )」が1820年に書いた詩の冒頭部分がこれで、この作品はギリシア神話の妖精(精霊)・アレトゥーサを描いているそうです。
最後の日本語字幕で、「退って(さがって)よろしい」は宛て字っぽくなってましたが、「withdraw」は「退く(しりぞく)」の意。「permission:許可、承認」を使って、「あなたは退く私の許可を持っている」という言い方になっています。
「これはエレベーター?」
「私の部屋だ。」
「そんなこと言って本当にすみません。でも、目まいがひどくなって。ここで寝てもいいですか?」
「普通そう考えるだろう。」
「バラのつぼみ柄のシルクのナイトガウンをお願いできます?」
「恐れ入りますが、今夜はご不便をお願いせねばなりません。これにて。」
「パジャマだわ。」
「悪いな、ハニー。私はここ数年ナイトガウンは使っていないんだ。」
「脱ぐのを手伝っていただける?」
「オーケー。ほらこれを。あとはあつかえるだろ。」(ジョー、ワインを飲む)
「私もいただける?」
「だめ。ねぇ、君。」
「これはとても珍しいわ。私はこれまで一度も殿方とふたりきりになったことがないのよ、服を着ていたときでさえね。それが服を脱いだときになりそうなの。これは最も珍しいことね。私はどうも気にしてないみたい。あなたは?」
「コーヒーでも飲みに出かけるとするか。君は寝なさい。あ、いや。この上だ。」
「とても親切ですこと。」
「おい、こっちへ。これはパジャマ。身につけて寝るためのものだ。君はこれをなんとか着なさい。分かった?」
「ありがとう。」
「そして、君はこの長椅子の上に寝る。ベッドでなく、長椅子にだ。ちゃんと分かった?」
「私のお気に入りの詩をご存じ?」
「君はすでにご披露なさったよ。」
「”アレトゥーサは起き上がった アクロサローニアの山々の中 雪の長椅子より” キーツよ。」
「シェリーだ。詩のことは忘れて、パジャマに注意を向けなさい。なら、問題ないから。」
「キーツ。」
「シェリー。10分くらいで戻るからね。」
「キーツよ。下がってよろしい。」
「どうもありがとう。」

翌日の昼すぎ、ジョー・ブラドリーの部屋。
アン王女の記者会見時間を寝過ごしたジョー。新聞社へ出て、言い訳して怒られているうちに、夕べ部屋に泊めた女性が王女であることに気づきます。一山当てて、アメリカに帰ることを夢見るジョーは、千載一遇のチャンスを逃すまいと必死です。
お昼というのにまだ寝ているアン王女は、ようやく目覚めようとしています。
記事のため、なんでも聞き出したいジョーは、ドクターを呼ぶアン王女の言葉にドクターのふりをして応えます。
「バナクホーフェン先生。」
「だいぶ、よくおなりです。何かお望みのものは?」
「山ほど。」
「医者の私に、全部仰せつけ下さい。」
「夢ばかり見て...」
「どんな夢を?」
「道端に寝ていたら、若い男の人が来たの。背の高い人で、私にとても意地悪でした。」
「意地悪?」
「すばらしかったわ。」(日本語字幕より)
「Dear Dr Bannochhoven...」
「Oh, sure, yes, well... You're fine, much better. Is there anything you want?」
「So many things.」
「Yes? Well, tell the doctor. Tell the good doctor everything. 」
「I dreamt and I dreamt...」
「Yes? Well, what did you dream?」
「I dreamt I was asleep in the street, and a young man came, he was tall and strong. He was so mean to me.」
「He was?」
「It was wonderful.」(英語字幕より)
ここでは特にむずかしい表現はないと思われますが、ジョーがとても意地悪だったというところがあります。
「mean」には3種類あります。動詞・形容詞・名詞でそれぞれ違う言葉として存在します。今回は、「was」のあとに来て形容詞となっています。形容詞は「並の、劣った、意地悪な」というような意味となります。「be+mean+to~」の形で「~に意地悪」ということになります。(動詞では「意味する、するつもりである」、名詞では「中間、平均」といった意味になります。)
アン王女は、ジョーが意地悪だったと言いながら、その体験をとても楽しんでいたようです。
「バナクホーフェン先生。」
「ああ、はいはい。あー、大丈夫ですよ、とても良くなられた。何かお望みのものがございますか?」
「とってもたくさん。」
「はい? そう、このドクターにお話し下さい。この良き医者にすべてをお話し下さい。」
「夢を見て、また夢を見て...」
「はい? そう、どんな夢を見たのですか?」
「見たのは、道端で寝てましたら、若い男性が来まして、彼は背が高くてたくましかったです。私にとても意地悪でした。」
「そうだった?」
「あれはすばらしかった。」

さて、アン王女が目覚めて、ここからが本当に二人が出会うと言える場面。アン王女は自分の状況が分からず、ちょっと慌てます。
「おはよう。」
「バナクホーフェンは?」
「そんな人はいない。」
「今、話をしていたのに。」
「何のこと?」
「私はケガをしたの?」
(「いや。」)
「起き上がれて?」
「もちろんさ。」
「ありがとう。」
アン王女は、自分がパジャマを着ていることに気づく。
「あなたの?」
肯くジョー。慌てて下半身を確かめるアン王女。
「なくしもの?」
「(いいえ。)ここは一体どこですの?」
「僕の安アパートさ。」
「無理に私をここに?」
「いや、その反対だ。」
「私は一晩ここに... 一人で?」
「僕を除けばね。」
「あなたとここに泊まったの?」
「その言葉はあまり、適当ではないが、泊まった事は確かだ。」
「よろしく。あなたは...」
「僕はジョー・ブラドリー。」
(「よろしく。」)
「君に会えて実に嬉しい。」(日本語字幕より)
「Good morning.」
「Where's Dr Bannochhoven?」
「I'm afraid I don't know him.」
「Wasn't I talking to him just now?」
「Afraid not.」
「Have I had an accident?」
「No.」
「Quite safe for me to sit up, huh?」
「Perfectly.」
「Thank you. Are these yours?」
「Did you lose something?」
「No. Would you be so kind as to tell me where I am?」
「This is what is laughingly known as my apartment.」
「Did you bring me here by force?」
「No, no. Quite the contrary.」
「Have I been here all night...alone?」
「If you don't count me, yes.」
「So I've spent the night here with you?」
「Well, I don't know that I'd use those words exactly, but from a certain angle, yes.」
「How do you do?」
「How do you do?」
「And you are?」
「Bradley, Joe Bradley.」
「Delighted.」
「You don't know how delighted I am.」(英語字幕より)
アン王女は自分がパジャマを着ていることから、上衣だけしか着ていないのではと不安になったようです。上衣だけ着てみたいという、いたずらなアイデアにバチが当たりましたね。
アン王女が自分がどこにいるのか尋ねていますが、とても英語的な表現でした。直訳すると、「あなたはあまりに親切なので、私がどこにいるかを私に教えてくださいます?」。あるいは「私がいるところを私に教えていただけるほど、とても親切でいらしてくださいます?」
ジョーも自分のアパートを紹介しますが、こちらも英語的な表現でした。「ここは、私のアパートとして笑われながら知られているところであります。」となりましょうか。回りからもおそまつだと知られている部屋となりますね。
「by force」で「力ずく」という意味になります。
「quite the contrary」という成句がありました。文尾または単独で、「まるでその反対に」という意味になります。
「from a certain angle」の「angle」は「観点、見方、視点」という意味ですね。辞書ではほかの例として「from all angle」で「あらゆる観点から」という表現がありました。
不安な表情のアン王女でしたが、自分が大丈夫であり、見知らぬ男性のアパートに泊まったりはしたが、何事もなく、むしろ親切にしてもらったことを知って、瞬く間に輝くような笑顔でジョーにあいさつを送ります。彼女の笑顔で場がわっと明るくなります。なんという存在感なのでしょう。
「delight」は「うれしい」です。「Delighted.」は、「I'm delighted to see you.」といったあいさつを省略したものだと思います。ジョーはこれに答えて、「あなたは、私がどんなに嬉しく思っているか知らない。」と言ってます。婉曲的にたいへん嬉しく思っていることを表現する言い方になってますね。
「おはよう。」
「バナクホーフェン先生は?」
「すまないが、その方は知らないね。」
「たった今、私は彼と話していたでしょ?」
「いいえ、すまない。」
「私は事故にあったのですか?」
「いいえ。」
「起き上がって座ってもまったく大丈夫?」
「まったくね。」
「ありがとう。これはあなたのもの?」
「なにかなくなった?」
「いいえ。よろしければ、私がどこにいるのかおっしゃっていただけません?」
「ここは、私のアパートとして笑われながら知られているところです。」
「あなたはここへ力ずくで私を連れてきたのですか?」
「いいえ、いいえ。まったくその反対です。」
「私は一晩中ここで、ひとりでいたのですか?」
「私を数えないのなら、そうです。」
「では、私は一夜をあなたと過ごしたのですか?」
「そう、その言葉をそのように使っていいか分かりませんが、ある意味、そうですね。」
「はじめまして。」
「はじめまして。」
「嬉しいです。」
「こちらこそ、本当に嬉しいです。」

スペイン広場での再開。
髪をカットしたあと、スペイン広場にやってきます。そこでアン王女は”ジェラート”を買います。そのジェラートをほおばるアン王女にジョーが偶然通りがかったように近づきます。
「やあ、君か。」
「ブラドリーさん。」
「見違えた。」
「似合って?」
「とてもね。約束とはその事か。」
「あなたに白状する事があるわ。昨夜、学校から逃げて来たの。」
「どうして。先生に叱られて?」
「違うわ。」
「訳があるはずだ。」
「1~2時間のつもりが、眠り薬を飲んでいたので。」
「なるほど。」
「車で帰るわ。」
「もう少し遊んでからにしたまえ。」
「ではあと1時間。」
「思い切って一日中遊ぶんだ。」
「前からあこがれていた事をしたいわ。」
「どんな?」
「何でも気が向くままにしたいの、一日中。」
「髪を切るような事?」
「カフェに入ったり、ウインドーショッピングしたり、雨の中を歩いたり。楽しみたいの。冒険も少しは。くだらないと思うでしょ。」
「すばらしい。よし。では一緒に遊んで回ろう。」
「お仕事は?」
「今日は休みにする。」
「でもあなたには退屈でしょ。」
「第1の希望は、オープンテラスのカフェだね。ロカの店に行こう。」(日本語字幕より)
「Well, it's you!」
「Yes, Mr Bradley.」
「Or is it?」
「Do you like it?」
「Very much. So that was your mysterious appointment.」
「I have a confession to make.」
「A confession?」
「Yes, I ran away last night...from school.」
「Why? Trouble with the teacher?」
「No, nothing like that.」
「You wouldn't run away for nothing.」
「It was only meant to be for a few hours. They gave me something last night to make me sleep.」
「Oh, I see.」
「I'd better get a taxi and go back.」
「Look, before you do, why not take a little time for yourself?」
「Maybe another hour.」
「Live dangerously, take the whole day.」
「I could do some things I've always wanted to.」
「Like what?」
「You can't imagine. I'd like to do whatever I liked, the whole day long.」
「Like having your hair cut and eating gelati?」
「Yes, and I'd like to sit at a sidewalk cafe, look in shop windows, walk in the rain. Have fun, and maybe some excitement. It doesn't seem much to you, does it?」
「It's great. Tell you what. Why don't we do all those things...together?」
「Don't you have to work?」
「No. Today will be a holiday.」
「You don't want to do a lot of silly things.」
「Don't I? First wish, one sidewalk cafe. Coming right up. I know just the place.」(英語字幕より)
アン王女は、告白することがあると言います。「confession:告白」は「make」するもののようです。
どこかで同じことを申し上げたかも知れませんが、今一度ご紹介しますと。「インデペンデンス・デイ」で、それとは知らない運命の朝の大統領と夫人の電話での会話でも、まったく同じように表現されています。大統領が娘と一緒にベッドで寝たことを、「告白します。若いブルーネットの美人の横で寝ています。」と言います。このときのオリジナルは、「I have a confession to make.」なんです。
どちらの告白も、告白にもかかわらず、ささやかな嘘が含まれているということに大いなる興味を抱きます。
ジョーの悪魔とも天使とも言えぬ誘惑の一言で、二人はおとぎ話の世界に踏み込みます。「dangerously」は副詞で、「危険なほどに、危うく」の意で、「live」を修飾します。「Live dangerously:生きなさいよ、危険に」って。これは、ジョーがポーカーゲームから自ら学んだ教訓なんでしょうか。あまり強くなさそうでしたけど。アン王女は、一人で街を歩きながら、本当は何度も「帰ろう」と「もう少し」、そして「1日はもう無理かしら」を繰り返し、自問自答していたことでしょう。「Live dangerously.」は命令形ですが、アン王女の最も従いたい言葉だったことでしょう。それまで、聞いてきたどの指示よりも。
「I could~」以下は、どうも仮定法の文型ですね。ジョーの「Take the whole day.:1日中使いなさい」という言葉を受けて、「If I took the whole day, I could do some things I've always wanted to.」という、仮定法過去の形の後半を述べたと言えそうです。この時制では、『現在の事実に反対の仮定をあらわす(東京研究社、新自修英文典 参照)』そうです。「もし、私が1日中使えば、いつもしたいと思っていたことをいくつかできるだろうに。」となりそうです。このニュアンスがすんなり理解できないですね。現在形では未来を仮定し、過去形では現在を仮定する。過去完了形になって、やっと過去のこと仮定するというのですから、頭で理解するだけではなかなか使えないですよね。とっさに英語で「~したら?」って勧められても、「I could ~」とは話せないですよね。とても、勉強になります。
ところで、道端にテーブルを出しているカフェのことを、「a sidewalk cafe」と言ってます。「sidewalk」は歩道という意味ですが、ちゃんと舗装されている歩道のことのようです。「look in」には「ちょっとのぞく」という意味があって、「look in shop windows」は私どもの言う「ウインドー・ショッピング」でいいのだと思います。「walk in the rain:雨の中を歩く」は、なるほど王女さまには許されないことでしょうね。「look」も「walk」も動詞が続いていますが、「I'd like to」の「to」が省略されているようです。「to」をつけると、説明がくどくなるのかも知れません。
最後の「ロカの店に行こう」に当たる英語字幕が見あたりません。ジョーは確かに「ロカ」って言ってるのですが、英語字幕からは省略されちゃったみたいです。
「あれ、君じゃないか!」
「そうですわ、ブラドリーさん。」
「あるいは、それって?」
「気に入ってくださる?」
「とっても。それが君のミステリアスな約束だったんだね。」
「告白することがあります。」
「告白?」
「はい、夕べ私は抜け出してきてしまったのです。学校から。」
「どうした? 先生ともめごと?」
「いいえ、そんなのじゃないわ。」
「なんにもなくちゃ、逃げ出したりしなかっただろうに。」
「ほんの1~2時間のつもりだったんです。かれらは、昨夜私に眠たくなるものを与えてたからなの。」
「ああ、なるほど。」
「タクシーを拾って、帰らなくてはなりません。」
「ねぇ、そうする前に、自分のためにもう少し時間を作ったら?」
「そうね、もう1時間ぐらいなら。」
「危険を恐れず生きなきゃ。1日を取りなさい。」
「(それなら)私がいつもやってみたいと思ってた事ができるんですけど。」
「どんな?」
「想像できないでしょ。好きなことをなんでもやってみたかった。1日中ね。」
「髪を切ったり、ジェラートを食べたりのような?」
「そう、そしてカフェで座ったり、ウィンドウ・ショッピングをしたり、雨の中を歩いたりしたいわ。楽しいことをするの、そしてちょっとどきどきするようなことも。こんなことは、あなたには大したことない、でしょ?」
「それはすばしい。言おうか。それらのことをやろう、一緒に。」
「仕事はいいのですか?」
「いいよ。今日はホリデーだ。」
「あなたは、たくさんのばかばかしいことはしたくないでしょ?」
「したくない、わたしが? 最初の願いは、カフェだね。さっそくこっちへ。ちょうどそんな場所を知ってるんだ。」

カフェでの会話。
「髪を見て先生達が驚く?」
「気絶するわ。昨夜の事が知れたら大変ね。」
「お互いに家族には黙っていよう。」
「いいわ。」(日本語字幕より)
「What will they say in school about your hair?」
「They'll have a fit. What would they say if they knew I'd slept in your room?」
「Tell you what, you don't tell your folks and I won't tell mine.」
「It's a pact.」(英語字幕より)
「fit」と言う言葉にはいくつかの種類があるようです。ここで使われているのは第2のもので、名詞です。「発作、気絶」という意味があります。第1の「fit」には、「フィットする」で知られている「ぴったりの、ふさわしい(形容詞)」の意味があります。
「folk」は「家族」の意。
面白いと思ったのは、「pact」です。個人間での「約束、契約」の意味があります。国家間になりますと、「協定、条約」という意味になります。アメリカ映画なら、条件を言い合って、「It's a deal.」あるいは「deal!」と言って取引を行ったり、握手をして互いの気持ちを確かめたりするところです。アン王女はおそらく公務で使われて耳にする「pact」をより身近な言葉として使っているのではないかと思いました。少し上品な感じがあるのではないでしょうか。
実際、このあと「deal」を使っているところがあります。ジョーはアービング・ラドビッチにやっとアン王女のことを打ち明け、互いの分け前を確認します。そしてジョーがアービングから金を借りてアン王女の世話をすると言うところでは、尻込みするアービンに、「deal」を使って、「Do you want in on this deal or don't you?」って聞いています。「want in」は「事業などに加わりたいと思う」意味があります。従って「君はこの取引に加わりたいのか、それとも違うのか?」って言ってます。「deal」は男の言葉と言えるのかも知れません。
余談ですが、アン王女の話す言葉と内容には、一般人にしては不自然さが出てしまってますね。しかし、ここはジョーが彼女がアン王女だと知っているがゆえに、不審がらず話を合わせているところ。そうでなければ、「あれ? あなた王家かなんかなの?」って言われそうなほど、王女らしい話し方になっているのだと思います。しかし、観客は彼女が王女であることを知っており、ジョーもつじつまを合わせようとしていることも知っているのであり、観客は二人の微妙な会話のやりとりの綾を俯瞰の位置からながめたり、互いの気持ちになったりして楽しんでいる部分だろうと思います。
「学校の人は、君の髪を見てなんて言うだろうね?」
「きっと気絶するわ。かれらが私があなたの部屋で寝たと知ったらなんていうでしょう?」
「言っとくがね。君の家族には言わないように。私も私の家族には言わない事にするよ。」
「協定ね。」

カフェにやっと写真係となるアービングがやってきます。事情を知らないアービンは、アン王女を見て「王女に似てると言われない?」って言いそうになります。
「名字は?」
「スミス。」
「よろしく。」
「光栄です。」
「まるで替え玉だ。」
「向こうに行く。」
「そう言わずに。いたまえ。」
「ではフランチェスカが来るまで。」
「ラトビッチさん、かえだまって?」
(「ああ、ちょっと。」)
「一種の俗語だ。魅力的な人という意味。」
「ありがとう。」
「いいえ。」(日本語字幕より)
「Anya...?」
「Smith.」
「Oh. Hiya, Smitty.」
「Charmed.」
「Hey, did anybody ever tell you you're a dead ringer for...」
「Well, I guess I'll be going.」
「No, don't do that, join us.」
「Well, just till Francesca gets here.」
「Tell me Mr Radovich, what is a ringer?」
「Oh, waiter!」
「It's an American term. It means anyone who has a great deal of charm.」
「Oh, thank you.」
「You're welcome.」(英語字幕より)
アービングは、自分のきさくなあいさつにも関わらず、アーニャ・スミスと名乗るアン王女が「Charmed:光栄です」と答えるのを聞いて、普通じゃないと思います。「ringer」には「ベルを鳴らす人」の他に、「替え玉、生き写し」という意味があります。「be + a + dead + ringer for + O」で、「Oによく似ている、うりふたつである」の意味となります。アン王女は、耳慣れない「ringer」という言葉を聞いて、どういう意味か尋ねます。ジョーはすかさず、「an American term」と言います。「term」はこの場合は「(ある種の)言葉、専門用語」の意で、「アメリカ特有のことば」といったことを示しているようです。「a great deal of 〜」は「たくさんの〜、多量の〜」の意。「charm」は「魅力、人を魅惑する力」。素直なアン王女はそれと信じて、ダンスパーティのとき、ジョーに教えられた意味で、「あなたはうりふたつ」と言うところがあるので、ご紹介しておきます。
「アーニャ...?」
「スミス。」
「おー、ハイ、スミティ。」
「光栄です。」
「ねぇ、誰かに言われなかったかな、うりふたつだって。」
「じゃ、失礼するとしよう。」
「いや、それはよせよ。一緒にいなよ。」
「じゃあ、フランチェスカが来るまでだぞ。」
「教えて、ラドビッチさん、うりふたつってなんですの?」
「おい、ウエイター!」
「それはアメリカの言葉さ。とても魅力のある人のことなんだ。」
「あら、ありがとう。」
「どういたしまいて。」

有名な場面です。
「"真実の口”だ。嘘つきが手を入れると、咬まれるという言い伝えがある。」
「怖いのね。」
「やってごらん。」
「あなたが。」
「いいとも。」
「こんちは。」
「ひどいわ。だましたのね。」
「ごめんよ。大丈夫?」
「びっくりした。」
「大丈夫?」
(「ええ。」)
「行こう。ああーっ!」(日本語字幕より)
「The Mouth of Truth. The legend is, if you're a liar and you put your hand in here, it'll be bitten off.」
「What a horrid idea.」
「Let's see you do it.」
「Let's see you do it.」
「Sure.」
「Hello!」
「You beast, you're all right!」
「I'm sorry. It was just a joke.」
「You never hurt your hand.」
「I'm sorry. OK?」
「Yes.」
「All right, let's go. Look out!」(英語字幕より)
水を差すようですが、この場面はグレゴリー・ペックがオードリー・ヘップバーンには内緒で、監督と相談して手を取られるふりをする演技をしたそうです。ご覧のように、オードリーの演技は自身は予期していなかったのに、完全な反応、演技だったことが分かります。彼女は本当にジョーの手を心配したように反応しています。カメラの前でオードリーがアン王女になったあとは、相手をいかに見て演技していたかが分かります。この最初のワンテイクでOKだったそうです。
小さなところですが、ジョーが「やってごらん」と言ったあと、試すかのようないたずらっぽい表情をしたのに対し、アン王女は困った表情から、意を決して受けて立つと言わんばかりの表情に変わります。どこまでも自然に見える演技ですが、オードリーが心の動きを表情にすぐに表現できる、たいへん優れた演技者であったことが伺えます。
「bite off」で「かみ切る」。「horrid」は「恐ろしい、背筋がぞっとするような」の意。
「真実の口だ。伝説では、もし君が嘘つきなら、手をこの中に入れると、かみ切られるそうだ。」
「なんて恐ろしい考えだこと。」
「君がするのを見るとしよう。」
「あなたがするのを見ましょう。」
「いいとも。」
ジョーは入れた手に異常が起こるふるをする。必死に助けようとするアン王女。無事手は抜けたが、袖の先には手がない。驚くアン王女に、袖の中から手を出すジョー。
「こんにちは。」
「いやな人、なんでもないじゃない!」
「すまない。ただの冗談だよ。」
「あなたの手はまったくなんともなかったのね。」
「すまない。大丈夫?」
「ええ。」
「よかった、行こう。うわっ、見ろ!」

お昼の観光が終わって、サンタンジェロ城のダンス・パーティーが話題になります。サンタンジェロは、「Sant'Angelo」ですから、英語だと「Saint Angel」、つまり「聖 天使」ということですね。聖天使城とは、アン王女のダンスにはぴったりの場所ですね。
(また余談ですが、親近感のあるロサンゼルスは略して、ロスと我々言いますが、これは日本だけで、ロスは「Los Angeles(天使たち);スペイン語、男性複数の定冠詞のlosと天使たちの意のAngeles」の定冠詞の部分なので、通常国際的にはこれを省略形としては使わないそうです。「LA」と呼ぶそうです。)
「船のダンス・パーティーへ。」
「サンタンジェロ城の?」
「今晩、連れていって。」
「もちろん。」
「行こう。」
「12時に私はカボチャの馬車で、姿を消すわ。」
「それが、おとぎ話の終わりか。」
「アービングはもう帰る。」
「おれが?」
「焼いたり付けたりする仕事があるだろう?」
「あれか。」
「早くやれよ。」
「また後で、スミティ。」
「頑張って。」(日本語字幕より)
「I've heard you can dance on a boat.」
「You mean Sant'Angelo.」
「Couldn't we go tonight?」
「Why not?」
「Anything you wish.」
「At midnight I'll turn into a pumpkin and drive away in my glass slipper.」
「That'll be the end of the fairytale.」
「I guess Irving has to go now.」
「I do?」
「Yes, you know, that big business development you have to attend to?」
「That development.」
「Can't afford not to.」
「Yeah. See you later, Smitty.」
「Good luck with the big development.」
「Thanks.」(英語字幕より)
「slipper」は通常日本では「スリッパ」のことですが、本来は「(舞踏用)軽い上履き」のことのようです。
「fairytale」は辞書では見つかりませんでした。通常2つの言葉で「fairy tale」として、「おとぎ話」の意味となります。
写真で「フィルムを現像する」の、現像は名詞では「development」。ジョーは今すぐ撮った写真を現像しておく必要があると考え、アービングに気がつくように、そしてアン王女には気づかれないように、「development」を「開発」というビジネス用語として使って指示します。
「Can't afford not to.」は分かりにくいですが、日本語字幕では「早くやれよ」と表現しています。「afford」には「〜できる、〜しても大丈夫だ」という意味があります。すると、「それをしないと、大丈夫でなくなるぞ」って感じになります。実は、辞書には「You can't afford not to do it right away.:すぐそれをやらないとたいへんなことになる。」というのがありました。ひょっとすると、この言い回しは、全部言わなくてもそれを言っていると思われるほど、一般に使われているのかも知れません。ただ、ここではあくまで、「You can't afford not to attend to that big business development.:あの大きな事業開発に出席しなければたへんなことになるぞ。」って言おうとしてると、アン王女には聞こえるはずです。
「ボートの上でダンスができると聞いたわ。」
「サンタンジェロのことを言ってるんだね。」
「一緒に行っていただけません?」
「もちろん。」
「君の望むことならなんでも。」
「真夜中になったらカボチャに乗り込んで、ガラス製の舞踏用上履きのまま走り去るわ。」
「それがおとぎ話の終わりなんだね。」
「アービングはこれから失礼しなきゃならないと思うが。」
「おれが?」
「そうさ、なあ、あの大がかりな事業開発は君が出席しなくてはならないんだよね?」
「あの開発だね。」
「でなきゃたいへんだぞ。」
「そうだな。あとでね、スミティ。」
「その大きな開発によき幸運を。」
「ありがとう。」

そのサンタンジェロ城でのダンス・パーティー。
アン王女はジョーとのダンスするなか、
「Hello.」
と言い、ジョーも
「Hello.」
と答えます。
王女なら使わないあいさつのことばでしょう。ジョーに使う。それは、ジョーの住む世界で、ジョーの使っていることばで呼びかけてみたいという願いだったのかも知れません。

アン王女は、改めて感謝を伝える。彼女はなにかを伝えたいかのようだが、まっすぐ見つめる彼女から逃げるようにするジョーでした。
「ブラドリーさん、失礼だけど、あなたはかえだまね。」
「どうもありがとう。」
「なぜ一日中、私にお付き合いして下さったの?」
「何となくだ。」
「本当にご親切ね。」
「それほどでも。」
「私のためにこんなにまで。」
「バーで何か飲もう。」(日本語字幕より)
「Mr Bradley, if you don't mind my saying so, I think you're a ringer.」
「A what? Oh, thanks very much.」
「You're spent the whole day doing things I've always wanted to. Why?」
「It seemed the thing to do.」
「I've never heard of anybody so kind.」
「It wasn't any trouble.」
「Or so completely unselfish.」
「Let's have a drink at the bar.」(英語字幕より)
アン王女は、ジョーがとてもすてきであることを、そのまま言わず、今日習ったアメリカことばで伝えます。
アン王女の「unselfish:無私の」という言葉を聞いて、ジョーは気まずく、バーに誘うのでした。
「ブラドリーさん、私の言うことを許していただければ、あなたはうりふたつですわ。」
「え? ああ、ありがとう。」
「あなたは、私がいつもしたかった事に1日を使って下さったわ。どうして?」
「するべきことだと思えたのさ。」
「そのように優しい方のことは聞いたことがありません。」
「大したことじゃないよ。」
「あるいは、まったくの無私の方なんて。」
「バーで何か飲もうよ。」

一方、秘密警察たちに連れ去られようとするアン王女を助けようとして、ジョーは自分のほんとうの気持ちが分かったかのようでした。
ずぶ濡れになったふたりがキスをしたとき、二人は互いの存在の大切さを感じたのでしょうか。
ジョーは彼女が守ってあげるべき存在であることに気がつき、アン王女は自分がいかに幼かったかに気づいたのでしょうか。

ジョーのアパート。
互いを思う気持ちがあふれ出しそうな場面。今日という日まで、いやほんの少し前まで、無邪気な少女だったアン王女でしたが、一生懸命自分を律しようとする健気な姿、今や彼女の方がほんの少し大人に見えます。
「服は?」
「もうすぐ乾くわ。」
「僕のどの服もよく似合う。」
「そうね。」
「元気がつくよ。」
「お料理させて。」
「台所がない。いつも食事は外だ。」
「イヤでしょ?」
「ままならぬのが人生だ。」
「本当に。」
「疲れた?」
「少し。」
「よく遊んだ。」
「楽しかったわ。」
ーアメリカ放送が特別ニュースをお知らせします。ヨーロッパご旅行の途中、病に倒れられたアン王女のご病状の発表がないところから、もしやご重体ではないかと、国民は心を痛めています。ー
「聞きたくない。」
(「そうだね。」)
「もっとお酒を。お料理したいわ。」
「学校で習ったのか?」
「お料理は得意よ。専門にやれるくらい。お裁縫もお掃除も習ったのよ。ただ、人にしてあげる機会がなくて。」
「では引っ越そうかな。台所付きの所に。」
「そうね。」
ー間ー
「もう帰らなければ。」
「話がある。」
「言わないで。着替えをするわ。」(日本語字幕より)
「Everything ruined?」
「No. They'll be dry in a minute.」
「Suits you. You should always wear my clothes.」
「Seems I do.」
「I thought a little wine might be good.」
「Shall I cook something?」
「No kitchen. I always eat out.」
「Do you like that?」
「Well, life isn't always what one likes. Is it?」
「No, it isn't.」
「Tired?」
「A little.」
「You've had quite a day.」
「A wonderful day」
「This is the American Hour with a special news bulletin. There is no further word from the bedside of Princess Ann, who was taken ill yesterday on the last leg of her European tour. Rumours suggest her condition may be serious, causing alarm and anxiety among the people in her country.」
「The news can wait.」
「Yes.」
「May I have a little more wine? I'm sorry I couldn't cook us some dinner.」
「Did you learn how in school?」
「I'm a good cook. I could earn my living at it. I can sew too, clean a house, iron. I learned to do a all those things, I just haven't had the chance to do it for anyone.」
「Well, looks like I'll have to move and get a place with a kitchen.」
「Yes.」
「I shall have to go now.」
「Anya... ...there's something I want to tell you.」
「No, please. I must go and get dressed.」(英語字幕より)
「料理を作りたかった」というアン王女のことばにすべてが語られています。もちろん、今日のお礼というわけではありません。ジョーのためにすることをしたかった、せめてそのまねごとでもいいからしたかったのだと思います。
「みんなくちゃくちゃ?」
「いいえ。もうすぐ乾くわ。」
「似合ってるよ。君はいつも僕の服を着るべきだね。」
「そのようね。」
「少しワインを飲むといいと思ってたんだ。」
「なにか料理してかまわない?」
「台所がないんだ。いつも外で食べてるんだ。」
「それが好きなの?」
「いや、人生って思ってるものとはいつも違うんだよ。違わないかい?」
「いいえ、違ってる。」
「疲れた?」
「少し。」
「なかなかの1日だったよ。」
「素敵な1日だった。」
ーこちらはアメリカ・アワー。特別ニュースを速報でお知らせします。アン王女はヨーロッパのご旅行に疲れ、昨日ご病気になられましたが、病床からは新しい発表がありません。彼女の病状は深刻ではないかという噂もあり、国民の間に懸念と不安が広がっています。ー
「ニュースは待つことがないのね。」
「ああ。」
「もう少しワインをいただける? 夕食を作れなかったのは残念だわ。」
「学校で作り方を学んだのかい?」
「私は腕の良いクックよ。料理で食べて暮らせるくらい。裁縫もできるし、家の掃除だって、アイロンかけも。みんな習ったのよ。ただ、誰かにしてあげる機会がなかったの。」
「じゃ、僕は引っ越しして、キッチンのある場所を見つけなきゃいけないね。」
「そうよ。」
「もういかなきゃ。」
「アーニャ、君に話したいことがある。」
「いいえ、お願い。私は着替えをしなくては。」

門の外での別れ。
アン王女は自分に言い聞かせるかのように、ジョーに指示します。
ジョーは今は本当に彼女のためにだけを思っているかのようです。
「ここでおります。私はその先の角を曲がります。あなたは、このまま帰って。私の行き先を見ないと約束して。決して振り返らないでね。私もそうするわ。」
「分かった。」
「お別れの挨拶も言えないわ。」
「言わなくていい。」(日本語字幕より)
「I have to leave you now. I'm going to that corner there and turning. You stay in the car and drive away. Promise not to watch me go beyond the corner. Just drive away and leave me. As I leave you.」
「All right.」
「I don't know how to say goodbye. I can't think of any words.」
「Don't try.」(英語字幕より)
「Don't try.」がこのようにやさしい言葉となるとは思いもしませんでした。
「これであなたとお別れです。あそこの角まで行って、曲がります。あなたは車にいて、走り去ってください。約束して下さい。角を超えて私を見ないと。ただ車で去ってください。私を残して。私があなたを去るように。」
「いいよ。」
「なんてさよならを言ったらよいのか分かりません。なにも言葉が思いつかないんです。」
「言わなくていい。」

アン王女の寝室で。
「24時間の間、何もなかったとおっしゃるので?」
「ありました。」
「両陛下に何とご報告します?」
「病気だったが回復したと。」
「私には大使としての義務があります。王女にも義務がおありのように。」
「義務の話なら、心配に及びません。私が義務をわきまえていなかったら、今晩帰っては来なかったでしょう。この先も永久に。また忙しい日程が続きますから、もう、やすみなさい。」
「要りません。もう退って結構。」(日本語字幕より)
「Your Royal Highness, twenty-four hours, they can't all be blank.」
「They are not.」
「What explanation am I to offer Their Majesties?」
「I was indisposed. I am better.」
「Ma'am, you must appreciate that I have my duty to perform, just as Your Royal Highness has her duty.」
「Your Excellency, I trust you will not find it necessary to use that word again. Were I not completely aware of my duty to my family and my country, I would not have come back tonight. Or indeed, ever again. And now, since I understand we have a very full schedule today, you have my permission to withdraw. No milk and crackers. That will be all thank you, Countess.」(英語字幕より)
アン王女はもうお転婆な少女ではありませんでした。
すてきな異性に出会って、成長したというだけのものでもありません。自ら王女の道を選んだのです。今は勢いだけかも知れませんが、決して表面を取り繕っただけのものではないと言えそうです。彼女は本気になったのです。自分に対し、自分の人生に対し。表面的な理解なら、誰しも色々あろうかと。しかし、それらも本人が心の底でどう思っているかで態度となって出てくるようです。
簡単に言うと、痛快でしたね。
「blank」は「白紙の、からっぽの」の意。「まったく何もなかった」とは言わせませんという感じです。
「Majesty」は複数形で、「Highness」と同様な使い方で、「両陛下」を意味するようです。
「indispose」には「軽い病気させる」という意味があります。また「indisposed」も形容詞の言葉としてなりたっています。意味は「(一時的に)気分がよくない、軽い病気の」。
「appreciate」は「感謝する」の他に「正しく理解する、価値を認める」意があります。「understand」が「内容の知的な理解が中心的な意味であるのに対し、「appreciate」は人の気持ち、ものの価値、ことの重大さなどの理解が中心的な意味になるそうです。勉強になりますね。
「Excellency」も大使・大臣・知事・総督などの高官・高僧に対する敬称だそうです。これも「Highness」と同様に、「His Excellency」や「Your Excellency」で使い分けします。アン王女は、会話も王女としての姿勢となり、自然と職務に応じた呼びかけを相手にしているかのようです。
「aware of」で「気づく」の意。「Countess」は「伯爵夫人」。
「王女様、24時間、すべて何もなかったなどはあり得ません。」
「ありました。」
「私はなんと両陛下にご説明すればよいので?」
「私は気分が悪くなり、そして良くなったと。」
「お嬢様、私が行うべき義務があります。王女様が義務をお持ちと同じように。このことをよく理解していただかなければなりません。」
「閣下、私は、あなたがそのような言葉を再び使う必要を見出さないと信じます。もし、私が私の家族、私の国に対しての義務にまったく気づかないようであれば、今夜戻って来なかったでしょう。いや、実際には永遠に2度と。それから、今日はいっぱいの日程が入っていると分かっていますから、退がってよろしい。ミルクもクラッカーも要りません。なにもかもご苦労でした、伯爵夫人。」

アン王女の記者会見。
アン王女は、記者たちを見回し、すぐにジョーたちがいることを見つけます。一瞬曇ったその表情に昨夜から今朝にかけてまでの、彼女の苦しみが伝わります。彼女に決意はあっても、ジョーへの思いが軽かろうはずがありません。ただただ、何も知らぬアン王女が少しでも心の糧を得られますよう、この場を見守るだけです。
「一同を代表して、お祝い申し上げます。ご病気のご回復を。」
(「ありがとう。」)
「ヨーロッパの経済問題は、同盟で解決し得るとお考えですか。」
「ヨーロッパ諸国の緊密化なら、いかなる方法も賛成です。」
「国家間の親善関係の前途を、どうお考えですか。」
「永続を信じます。人と人の間の友情を信じるように。」
「私の通信社を代表して申しますが、王女のご信念が裏切られぬ事を信じます。」
「それで安心しました。」
「どこの都市が、一番お気に召しましたか。」
ー間ー
「どこにもそれぞれ...」
「どこにもそれぞれよいところがあり、どことは申せま... ローマです。なんといってもローマです。私はこの町の思い出を、いつまでも懐かしむでしょう。」
「ご病気あそばしたのに?」
「そうです。」
「ではお写真を」
アービングがわざとライター型のカメラで王女を撮影する。
「以上で会見を終わります。」
「記者の方々に挨拶を。」(日本語字幕より)
「I believe at the outset, Your Highness, that I should express the pleasure of all of us, at your recovery from the recent illness.」
「Thank you.」
「Does Your Highness believe that federation could be a solution to Europe's economic problems?」
「I am in favour of any measure which would lead to closer cooperation in Europe.」
「And what, in the opinion of Your Highness, is the outlook for friendship among nations?」
「I have every faith in it...as I have faith in relations between people.」
「May I say, speaking for my own press service...we believe that Your Highness's faith will not be unjustified.」
「I am so glad to hear you say it.」
「Which of the cities visited did Your Highness enjoy the most?」
「Each in its own way...」
「Each in its own way was unforgettable. It would be difficult to... Rome! By all means, Rome. I will cherish my visit here in memory, as long as I live.」
「Despite your indisposition, Your Highness?」
「Despite that.」
「Photographs may now be taken.」
「Thank you, ladies and gentlemen. Thank you very much.」
「I would now like to meet some of the ladies and gentlemen of the press.」(英語字幕より)
アン王女は、彼の誠実な存在に触れ、色々な思いにとらわれながらも、苦痛だったはずの会見のやりとりの中に自分らしさを発揮し始めます。そしてそれは、彼女の王女らしさの発揮でもあったように思えるのです。
記者の言葉で、「at the outset」は「最初は」の意。「express」は「(思想・感情などを)表現する」意味があります。
「favour」は「favor」と同じ。「in favor of 」で「〜に賛成」の意。
「opinion」は「意見」、「outlook」は「見晴らし、展望」の意。「among」は「(3つ以上の)間に」。
「faith」は「信頼、信用」。
「unjustified」は、「不当な、筋の通らない」。
「cherish」は「(大切に)心に抱く、持ち続ける」意味があります。
「despite」は、「にもかかわらず」。「indisposition」は「気分の悪いこと」。
「最初に、最近のご病気から回復されたことに対し、私達全員の喜びを表明申し上げます。」
「ありがとう。」
「王女さま、ヨーロッパの経済問題に同盟は解決になるとお思いでしょうか。」
「ヨーロッパの緊密化を導くいかなる方法も私は賛成します。」
「王女さまのご意見として、国家間の友好関係の展望はいかがでしょうか?」
「私はそれぞれに対し信頼しており、それは私が人々の間の友情関係を信じていると同じようにです。」
「申し上げます。我が通信社を代表して、私どもは王女さまの信頼が不当に扱われぬことを信じております。」
「あなたがそう言うのを聞いて、たいへんうれしく思います。」
「王女さまが最も楽しまれたのは、ご訪問された町の中のいずれでしょうか。」
「それぞれにはそれなりの...」
「それぞれにはそれなりの忘れられないものがあります。それは無理な..ローマです。絶対ローマです。私はこの町を思い出として、生きている限り大切に思うことでしょう。」
「ご気分がすぐれなかったのにもかかわらずですか、王女さま?」
「それにもかかわらずです。」
「写真をお取り下さい。」
「ありがとうございます。淑女、紳士のみなさま。ほんとうに有り難うございました。」
「では、記者の淑女、紳士の方々にあいさつしたいと思います。」

アン王女が次第にジョーに近づいていく場面は何度見てもどきどきします。
アン王女とジョーの間には、会話らしい会話はありませんでした。しかし、それにもかかわらず、互いが誠実さを確かめ合い、再会できた喜びを分かち合えたこと、その喜びを胸にしまう辛さも分かち合えたことも、ふたりの表情からうかがえます。
ジョーは、いずれアン王女のことのみを思い、誠実であったことを強く誇りに思うだろうことを信じながらも、あの1日を、アン王女と共に帰してしまったことへの気持ちで、長く悩むことになるのでしょうか。きっと、その後のアン王女の活躍を見て、励まされ、強く生きてゆけるのではないでしょうか。それは、彼女の最後の笑顔が保証してくれたように思えるのです。


まったくの余談になりますが、衣装デザイナーのイーディス・ヘッドは、俳優には衣装に注文をつけられなかった当時の中で、俳優の希望を聞き入れて、うまくそして素晴らしい衣装デザインを行ったそうです。ですから、最初新進気鋭の女優担当だったのですが、女優が成功して大女優になっても、イーディスは人気が高く、信頼を得ていたそうです。
ところで、彼女の映像を見ると、丸いサングラスをかけて、おかっぱ頭なんです。あのアニメ「ミスター・インクレディブル」に登場する衣装デザイナー「うりふたつ」なんです。失礼しました。

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