「If you want to take me to the stewardess, then take me. If you want to arrest me, go ahead.」(「刑事コロンボ・殺人処方箋」より)
MY DVD:「PRESCRIPTION MURDER:殺人処方箋(1967年製作)」発売元:CIC・ビクタービデオ株式会社 UDF-1
最近、昔テレビシリーズだった「刑事コロンボ」がまた放映されているようです。
「刑事コロンボ」は、まず先に犯人の殺人が見せられ、後からコロンボが登場し、徐々に犯人を追い詰め、最後には思わぬアイデアで犯人の急所を突くという物語の展開が特徴です。したがって、犯人の気持ちでコロンボに痛いところを突かれる気分を、そしてコロンボ側から犯人の真相に近づき、犯人を追い詰めるおもしろさを、そして最後にまさかの方法で犯人を降参させる痛快さをそれぞれ味わえる、すぐれた作品でした。
DVDで少し作品を追ってみると、まず「殺人処方箋」に始まり、「死者の身代金」に「構想の死角」が続きます。
「構想の死角」で、シリーズ化決定後の最初となっており、ここから本格的にピーター・フォークのコロンボが形作られていったと思われます。実際、「殺人処方箋」の頃は、上等でないレインコートを着ていますが、それなりの靴を履いていますし、髪型も小ぎれいな感じです。当時「うちのカミさんがね」っていうのがトレードマークになっていましたが、最初の2作はそれほど全面的に打ち出している感じはないようです。
また、「構想の死角」はまだ無名だったスティーブン・スピルバーグが監督したというおまけつきです。
テレビではどのように放映されたのか、どの順番で放映されたかは、今となっては定かではありませんが、今回は第一作を取り上げてみようかと思います。なんといっても最後がたいへんおもしろかったし、インパクトありましたから。
犯人は知性高い精神分析医フレミング。自分の妻を殺したあと、自分の患者でもある愛人ハドソンに妻の衣装を着させます。かつらにサングラス、青いドレスに手袋。そして、二人、アカプルコに旅行へ出かける夫婦を装う。しかし、けんかから搭乗した飛行機の中で物別れとなり、妻だけが急遽家に帰ったと周囲の者に思わせて、アリバイを作ったのである。
フレミングの精神分析医らいし計画で、人の思い込みにつけ込んだ大胆なアリバイ工作だったが、これがうまく働くのだった。人は皆、フレミングのそばにいるというだけで、変装した愛人を本当の妻だと思ってしまうのである。
旅行から家に戻ったフレミング。そこには刑事コロンボが待っていた。
妻はどうしたと問い詰めるフレミングに、意外な答えをするコロンボ。
「そのですね。何者かが侵入して、殺そうとしたんです。」
「殺そうとした?」
「ええ、幸いまだ生きていますがね。」((日本語吹き替えより)
「Well...somebody broke in here and tried to kill her.」
「Tried to kill her?」
「That's right, Doctor. She's lucky, she's still alive.」((英語字幕より)
こうして、殺したはずの妻が生きていることを知り、まずは犯人のハラハラする心理を味わうことになります。
結局妻は、犯人である夫の名を呼んで、息を引き取ります。
ここから、コロンボとフレミングの頭脳合戦が幕開けとなります。
さまざまな接触の中から思わぬ痛いところを突くコロンボですが、フレミングを追い詰める手立てには一歩届かず、なかなか歯が立ちません。
コロンボはついに直接対決を避け、精神的に脆い面のある愛人ハドソンへと矛先を向けます。
コロンボが、俳優であるハドソンを訪ねて、撮影所に来る場面。
ハドソンが殺された奥さんの写真を拒むのをみて、ここぞと一気に詰め寄るコロンボ。
「やめて。」
「あんたがいなきゃ、奥さんは生きてられた。」
「やめて。」
「今頃、死体置き場に行かずに済んだ。」
「やめて。」
「あんたが殺したと同じだ!」
「やめて!」(日本語吹き替えより)
「Stop it.」
「Without you that woman would be alive.」
「Stop it.」
「Without you she wouldn't be lying in the morgue.」
「Stop it!」(英語字幕より)
精神的行き場を失ったハドソンは、顔をそむけたままうなだれてしまった。
我が意を得たコロンボ、彼女をやさしく促します。
「それじゃ、本部で供述取りますからね。」(日本語吹き替えより)
「Why don't we go downtown, and you can make a statement.」(英語字幕より)
果たして、彼女が顔を上げたとき、すでに彼女は、長い間失われていた強さを取り戻していたのであった。
「イヤよ。これ、人権侵害よ。あたし、関係ないと言ってるでしょ。全然、全然関係ないわ。」(日本語吹き替えより)
「No! You have no right! I have nothing to do with this. Do you understand? Nothing. Nothing at all...」(英語字幕より)
コロンボは思わず、口にくわえていた葉巻を手に取った。今目の前の彼女には、もはやつい先ほどまでの彼女の姿はどこにもなかった。怒りが、彼女に彼女本来の強さを呼び覚ましたのである。そして、毅然とした態度で彼と対峙していたのである。
「スチュワーデスに会わせたいなら、やるがいいわ。逮捕したいなら、やるがいいわ。でも、なんにも立証できないわよ。逮捕するか、このまま引き下がるか、好きな方にしたらいいわ。」(日本語吹き替えより)
「If you want to take me to the stewardess, then take me. If you want to arrest me, go ahead. But you can't prove anything. Now either charge me or let me leave. I don't care what you do.」(英語字幕より)
コロンボは彼女が自分の言葉を取り戻したことを悟ったのであろう。そして、その態度に敬意を示すかのように言葉を贈った。
「行っていいですよ。」(日本語吹き替えより)
「You can go.」(英語字幕より)
しかし、コロンボはあらためて意を強くしたかのように、彼も自分の決意を彼女に返すのであった。
「ハドソンさん、これからが本番だと、腹くくっておくことですよ。あたしだって、こんなことやりたくないんだ。これからぁ、あんたをまいらせるために、ありとあらゆる手を使うつもりだ。フレミングはひとつだけミスをやった。あんたを使ったことだ。弱いあんたをね。今日は思いがけず、気丈なところを見せられましたが、明日ということもある。その次の日もある。その次の日もある。遅かれ早かれ、あんたはしゃべることになる。その時が来るまで、質問され、尾行され、駆り立てられる。フレミング先生にも止めようがないんだ。あんた一人でがんばるしかない。あたしゃ、あんたを落として、あいつを逮捕します。これは、約束します。」(日本語吹き替えより)
「MIss Hudson... I hope you understand this is only the beginning. In a way, I feel sorry for you. Because from now on I'm gonna do everything I can to break you down. Do you understand? Dr.Flemming made one mistake and you're it. You're the weak link, Miss Hudson. You surprised me today because you're strong. But there's always tomorrow. And the day after that. And the day after that. Sooner or later you're gonna talk to me. Until you do you're gonna be questioned, You're gonna be followed, you're gonna be hounded. Dr.Flemming can't do anything about it. You're on your own, Miss Hudson. And I'm going to get to him through you...that's a promise.」(英語字幕より)
ハドソンは、コロンボの言うとおり、尾行され、自宅も張り込みにべったり監視されることとなった。
そんな中、大胆にも彼女はフレミングに電話するのだった。事情を聞いたフレミングはなおさら警戒を深め、今夜会いに来て欲しいと懇願する彼女の申し出を断り、翌日の再会までの辛抱を要求するのだった。
ある意味で、ここでの彼の計画遂行を優先しようとする非情さが、彼の人生そのものの破綻を招くことになったのである。
英語字幕を確認してみますと、さすがに吹き替えということで、伝えられる情報量が増えるからと思いますが、双方比べてみても、ほとんど違和感ありません。
内容の説明は不要と思われますが、ハドソンが開き直って言い返すセリフの「スチュワーデスに...」のところは、英語でもシンプルながら魅力のある表現となってますね。本来なら、参考人という軽いものではなく、容疑者としてスチュワーデスに会わされたり、あるいは逮捕されたりと受け身な立場にあるはずの彼女が、「then take me:なら、私を連れて行きなさい」とか、「go ahead:おやりなさい」などと命令口調となって、彼女が取り戻した内面の強さが言葉に表れています。
コロンボの反論部分も、吹き替えは彼の人間性を加味したような卓越したセリフとなっています。
英文で意味を確認したくなったのは、「in a way:ある点で(ある意味で)」・「from now on:これより」・「the weak link:弱点、命取りになりかねない人」・「be hounded:しつこく追い回される」・「on one's own:ひとりで、独力で」などがありました。
また「break down」は、辞書ではいくつか意味がならんでいた中で、せいぜい「(抵抗を)やめさせる」ぐらいしか適当なものが見つかりませんでした。そこで刑事もので、つっぱねていた犯人に犯行を認めさせることを、「落とす」という言い方をしますが、このセリフの最後に英文にないところへこの表現を使ってます。むしろこちらの表現を「落とす」でどうかなと考えています。
「ハドソンさん。あなたには、これがただの始まりに過ぎないと言うことを分かっていただきたいですな。ある点では、申し訳ないと思ってます。というのは、これからあなたを落とすためにありとあらゆることをするつもりです。分かりますか? ドクター・フレミングは、ひとつだけミスを犯した。あなたがそれです。あなたが弱点なんです、ハドソンさん。今日はあなたに驚かさせていただきました。あなたの強さにね。しかし、常に明日というものがあります。また、次の日ということもある。そのまた次の日も。遅かれ早かれ、あなたは私に話すことになるでしょう。そうするまでは、あなたは質問され、追跡され、そして追い回されるでしょう。ドクター・フレミングもこのことには何もできません。あなたは自分でやるほかありません、ハドソンさん。そして、私はあなたを通して、彼を逮捕するつもりです。これは約束します。」
この最後の、「that's a promise.:これは約束です。」は、とても強い言葉のようです。「I will」や「I'm going to」などような「つもり」の状態ではないようです。「必ず遂行する」ことが「約束」することのようです。ひょっとすると、精神的には”契約”よりも強いかも知れませんね。”契約”には”破棄”する逃げ道がありますからね。
いよいよクライマックスです。
「殺人処方箋」をこれまで見たことのない方で、結末をお知りになりたくない方は、これからさきはご遠慮ください。
テレビ放映されただろうこと、かなり年月が経っていることから、これから結末までご紹介することをお許し願いたいです。
翌日フレミングのもとには、約束の時間が過ぎてもハドソン嬢は現れなかった。
不安になったフレミングは、秘書に確認の電話をさせるが、検死官や警官が電話に出てくるだけで、なにやら”事故”があったことぐらいしか分からない。業を煮やしたフレミングは、後の患者はキャンセルするよう秘書に指示して、ハドソン宅に向かうのであった。
ハドソン宅に着くと、コロンボ刑事が無表情に突っ立っている。その前を通り抜け、庭の方から中へ入ると、プールの反対側で、水着姿のハドソン嬢が二人の警官に持ち上げられて、搬送用担架に乗せられているところであった。
顔には布が被されるのであった。
「まさか何だというんだ?」
「昨日ちょっと質問したんですが、どうも少しきつく言い過ぎたようです。あの女(ひと)通して、あんたを落とすと。」
「君が彼女を追い込んだんだ。予想できなかったのか。どうでもよかったのか。」
「説教は結構で。これぁ、一生あたしの責任としてしょってきます。が、あんたにも責任がある。二人で殺したんだ。あの女はあんたを守るために自殺したんだ。ただ、あんたのためにです。ところで、おめでとう。これで、あんた一生ご安泰だね。しかし、うまくいったもんだ。ただひとりの証人だったからね。もう、私にはなんにもできない。あんたは、天下晴れて”白”だ。あんたの勝ちですよ。しかし、同情すべき点もある。」
「どういうことだね、それは。」
「あの女ですよ。あの女を愛し、そのために苦労して殺しまでやったのに、いざとなったら肝心の彼女がいないんですからね。なんにも残っちゃいない。」
「何が言いたいんだ?」
「別になんにも。ただ、こう思ったんですがね。これから先はさぞかし孤独だろうとね。秘密をはき出しちゃった方が、楽になりませんか。」
「どんな秘密を。」
「真相をです。」
「つまり、自白しろって言うのかね。」
「不思議じゃないっと思いますが。だって、先生には楽しみもないでしょ。ねぇ、そうでしょ。あの女は死んでしまったし、あの女への手向けになるかも。如何です?」
「ふふふふ。やはり、君はおかしな男だ。」
「わたしゃ、大まじめですよ。」
「しかし、事実おもしろいよ。そう、我が身を罰せよと言うのか。ただひとりの愛人を失い、生きる希望もないからと言うのかね。」
「そう! もし、本当に愛しておられたなら。」
「あの娘(こ)を愛した? 君を買いかぶりすぎたようだな。君なら、人間を理解していると思ったが。僕は愛してなかった。」
「まさか、先生!」
「事実さ。覚えてるだろ、仮定の殺人者の話を。彼にはアリバイが必要だった。あの娘が手近にいたので利用した。それだけさ。」
「そんな。だって、あの女を愛したからこそ、奥さんを殺したんでしょ?」
「もし、僕がキャロルを殺したなら、もちろんその証拠はないが、それは僕自身のためで、大部屋女優のためではない。」
「でも、殺しに手を貸したんだから、結婚しなきゃならんでしょう。」
「そうとは限らんさ。解決法はいくらでもある。事故で死ぬこともあり得るし。」
「そこまで計画してあったの、レイ。」(日本語吹き替えより)
彼女の声が響いた。部屋の奥に女性の姿があった。しっかりした足取りで歩んで来るその姿は、まさに彼女に間違いなかった。彼の存在は音を立ててくずれた。
「はっきり、この耳で聞いたわ。」(日本語吹き替えより)
今度は確かめるように、歩み寄るフレミング。ふと、プールの向こうに運ばれていった死体の方に眼をやると、そこには見慣れた水着を着て、何事もなかったかのように立ってこちらを見ている、まったく別の女性の姿があった。髪の毛の色、顔つき、スタイル。何もかもが彼女そっくり。しかし、彼女ではなかった。
フレミングは静かに、ハドソン嬢を見、コロンボを眺めた。
彼女はしっかりした眼をしていたが、失意の表情だった。一方、コロンボは、先ほどまでの気配を消した表情から一変し、物事を最後までやり遂げる気迫が表に出てたのである。
この快感。
視聴者というよりは、むしろフレミングの立場に近い、”してやられた”っていう感覚に、こみ上げる快感があとを追ってくる。
コロンボに追われ、フレミングに助けを求めていたハドソン嬢に何があったのか。彼女は、コロンボに”落とされ”たのだろうか。彼女はその脆さを突かれ、コロンボに屈したのであろうか。
いや、コロンボは、その意に反して、彼女の中に、愛に生き、彼女を彼女らしい人生に導く生命力のある姿を見た。そして、このことにこそ、コロンボは新たな希望を見出したのであろう。コロンボは彼女の愛を尊ぶ精神に賭けたのだろう。
もはや、脆いのはハドソン嬢ではく、フレミングの愛のない思い上がりの部分となったのである。
コロンボは、ハドソン嬢の愛を尊ぶ力で、フレミングの愛を利用した罪を糾弾したのである。
「You didn't think what?」
「I questioned her yesterday... I guess I pushed her too far. I told her that I... I was gonna get to you through her.」
「You had to bring her into this, didn't you? Didn't you know what she'd do? Or didn't you care?」
「Don't lecture me, Doctor! I'm responsible! And I'm gonna have to live with it. But you're leaving somebody out. We both killed that girl, the two of us together! She committed suicide for one reason...to protect you! You see it was all for you, for you, Doc. By the way, congratulations. I mean, you're home free, aren't you? Boy, you couldn't have worked out better. She was the only one who could have given you away. I can't touch you any more; nobody can. You're free and clear. You've won, Doc. The only trouble is, you didn't get what you were going after.」
「What is that supposed to mean?」
「The girl. You loved her...and you wanted her, and you were willing to murder for her. But now she's gone. All that planning, all that sweat. And you wind up with nothing.」
「What're you trying to tell me?」
「I'm not trying to tell you anything, Doctor. I was just thinking that uh... You're going to be a terribly lonely man from here on in... And maybe you'd feel better if you got a few things off your chest.」
「Like what?」
「like the truth.」
「Are you asking me to confess?」
「Well, that's not so strange. After all, what have you got to look forward to? Think about that, Doc. The girl isn't around any more...and maybe you owe her something. What do you say, Doc?」
「You are very funny man.」
「I wasn't trying to be funny.」
「But you are...more than you know. So you want me to purge myself. My one-and-only love is dead and I have nothing more to live for.」
「All I'm saying is that if you loved that girl...」
「Loved that girl? Look Columbo, I overestimated you. I thought you understood about human nature. I never love that girl.」
「Come on, Doc.」
「No, really... ...remember that hypothetical muudere we were talking about? He needed an alibi. The girl was available so he used her. it was as simple as that.」
「No. You killed your wife because you were in love with the girl.」
「If I killed Carol...and there's no proof that I did...I did it for myself, Not for some dima-a-dozen little actress.」
「She helped you with the murder. You would've had to marry her.」
「Not really. Something would have been arranged. Like an accident, maybe.」
「Always planning ahead, aren't you, Ray?」
「They said there was something I should hear...」(英語字幕より)
「I pushed her too far.」は「あまりに遠くへ彼女を押しすぎた」って感じですが、「push」には「問い詰める」って意味もあるようです。従って、「 I guess I pushed her too far.」は、やはり「どうも、彼女を問い詰めすぎたようです」となりそうです。
「You had to bring her into this」の「had to」は「have to」の過去形で、この場合「違いない」という感じです。「bring O1 into O2」で「O1にO2に入ってもらう」という柔らかな意味があります。しかし、「You had to bring her into this, didn't you?」は、「君が彼女をこの事態に追いやった、違うかね?」と強く詰め寄る内容になっています。
このように「彼女を巻き込んだ」と責められたコロンボは、「 But you're leaving somebody out.」で「しかし、あなたは誰かさんを閉め出したたままにした」と言って、フレミングに「彼女をほったらかしにしたのは誰か」と反論しています。
互いの罪を咎める話が一段落すると、コロンボはハドソン嬢が死んだことで、フレミングが勝利を勝ち取ったと話を振ります。
「you're home free」の「home free」は、「勝利疑いなしの、楽勝ムードの」という形容詞句となります。
「Boy, you couldn't have worked out better. 」はコロンボの皮肉が入った感じです。ここでの「work out」は「(苦労して)〈事〉をやり遂げる」意となりそうです。頭に「boy」を付けて、揶揄するように、「君はね、(頑張ったが)よくやったとは言い難い」って言ってる感じです。
ところが、彼女は死んでしまったわけです。「give away」で「〈秘密など〉をばらす、正体を現す」って意味があるようです。
「free and clear」って法律用語では「〈財産が〉抵当に入ってない」という意味になるそうです。面白いですね。ま、「自由で潔白」でいいと思いますが、イメージを膨らませて「〈自分の身が殺人の〉嫌疑にかからない」という意味にもなることも学べますね。
「you didn't get what you were going after.」って、分かりにくいですね。「あなたは得なかった」・「あなたが(事の)後で向かおうとしたものを」。つまりコロンボは、彼女が死んだことで、フレミングが本当の目的を失ったと言ってます。
「What is that supposed to mean?」の疑問形を、肯定文風にしますと。「that is supposed to mean what」ってなります。「be supposed to do」で「するはずである、しなければならない」であります。従って、「それは〈何〉を意味するはずである」ってなります。回りくどくてすみませんが、「それは何を意味するはずなのかね?」から、「それはどういう意味で言ってるのかね?」って感じになります。
「wind up with」で、「〜でやめる、〜でけりをつける」といった意味を持つようです。「And you wind up with nothing.」は、「そして、あなたは何も手にすることなく、ことが終わってしまった」となり、あるいは「結局、ことが終わって、あなたには何も残らなかった」ってなりそうです。
「get O1 off O2」は、辞書に「O2を説得してO1を手に入れる」とあります。「And maybe you'd feel better if you got a few things off your chest.」は、「そしておそらく、あなたはご自分の胸に相談してなにか少しでも得られたら、気分もよくなるのではないですか」ってなります。
「confess」は「白状する、告白する」。「strange」は「奇妙な、不思議な」。「look forward to」は「期待する」。
「S+owe+O1+O2」で、「SがO2をO1に対して負っている、O1にO2の恩義がある」となります。従って、「 you owe her something」は、「あなたは彼女に対しなにがしかの借りがあるでしょ」って感じです。
「purge」には「清める、あがなう」という意味があります。となりますと、「you want me to purge myself」は「あなたは私に、私自身を清めることを望んでいる」、「君は私に罪をあがなえと言ってるのだね」などとなります。
「overestimate」は「過大評価する、買いかぶる」です。
フレミングは「I thought you understood about human nature.」と言って、「君は人間の本質をよく理解していると思っていたんだがね」と見下していますが、まさにコロンボは人の本質・特質をよく理解した解決方法をこのあと見せることになります。
聞き慣れぬ「hypothetical」は「仮定上の、仮想の」。
「alibi」は「アリビ」ってなんだ?って思いましたが、「アリバイ」でした。加えて、「アリバイに使われる人」って意味もありました。そして、そもそも「口実、言い訳」の意があるのですね。また、ラテン語の「alibi」には「どこかほかのところで」って意味があるそうです。面白いですね。
「available」には「利用できる、得られる」などの意味があります。「The girl was available so he used her.」は、「あの娘は利用できたので、彼は使ったわけさ。」って、こいつひどい奴ですな。
コロンボはそうじゃない、彼女への愛のために人殺しをしたのだろと、愛を謳ってみせます。フレミングは勝ち誇ったように、ハドソン嬢をけなすのでした。フレミングは踏み出してはいけない扉を開けて、自らの真実を語ってしまいます。
「dima-a-dozen」という英文は、おそらく「dime-a-dozen」のなまったものか、間違ったものじゃないかと思われます。「dime-a-dozen」の方は、「a dime a dozen」のことで、「dime」が10セントを示しますので、「1ダースにつき10セント」の意から、「ありあまるほどいる、一山いくらの、ごくありふれた、つまらぬ」などの意味となってます。日本語の「十把一絡げ:どれもこれもあまり価値のないものとして、多数をひとまとめに扱うこと。また、何もかも一緒くたにして扱うこと。」に近い感じ。もっともこちらは「〜に扱う」といった動詞的な意味ですけど。元に戻りまして、吹き替えの「大部屋女優」はなるほどって感じです。
ハドソン嬢の最後の言葉に、トリックの種明かしが含まれていました。
「They said there was something I should hear...」
「かれら(刑事たち)は言った、そこには何かある、私が聞かねばならないものが...」
ところで、先ほど紹介した「be supposed to ~」の文型は、現代風な映画の中でよく耳にします。
「ザ・ロック:THE ROCK」にもありました。
長い間投獄されていたショーン・コネリーが、特殊任務にかり出されそうになったとき、ちょっとしたすきを突いて、逃げだし、唯一の家族である娘に会ったときの会話。
「I've rehearsed this speech a thousand times on the chance that we would meet. Here we are, and I'm lost.」
「Well, I don't know how I'm supposed to be feeling either.」(英語字幕より)
短いシーンですが、ちょっとした見せ場になっています。訳してみました。
「私たちが会える日のために何百回も言い方を練習してきたんだ。なのにこうしてみると、真っ白だ。」
「ええ、私もどう思えばいいのか分からないわ。」
そして、「ショーシャンクの空」での「be supposed to ~」。
長い間囚人生活をしてきて、思わぬところから見つかった自分の無実を証言する青年を無惨にも殺され、自らも独房に入れられた後、ティム・ロビンスの言動はおかしくなっていた。みんなが彼の自殺を心配する中、ひとりがロビンスから1本のロープの調達を頼まれて渡したと言う。非難されるその男。
「Hey, how was I supposed to know?」(英語字幕より)
「私はどうやって知ってることになってたというのか?」。いや、「私にはどうやっても知れやしないじゃないか?」という感じですかね。
はたまた、「ミッション・トゥ・マーズ」にもありました。
「She wasted away in front of his eyes. What was he supposed to do, suck it up? Get with the program? That he showed a little emotion? 」(英語字幕より)
(「waste away」で「衰弱する・やせ衰える」、「suck it up」は「困難を受け入れる」、「get with」は「に取り組む」、文章は途切れているが「that」以下は直前の「the program」を説明している。)
訳してみますと、
「彼の目の前で彼女は衰弱していったんだ。どうすりゃよかったと言うんです、辛抱しろと? (心理)プログラムに取り組めと? 彼のちょっとした感情を見せるための(プログラムに)?」
訳してみました。
「何を思いつかなかったって?」
「彼女に昨日尋問したんです。どうも、問い詰めすぎたようで。彼女に言ったんです。彼女を通してあなたを捕らえると。」
「君が彼女をこの事態に巻き込んだに違いない、そうじゃないかね? 彼女のしそうなことが分からなかったとでも? あるいはどうでもよかったと?」
「説教は結構です、ドクター。責任は私にあります。このこととともに生きていくつもりです。しかし、あなたも閉め出したままにしたよね。私たちは共にあの女を殺したのですよ。私たち二人ともね。彼女が自殺を犯してのはただ一つの理由のため、あなたを守るためだ。すべてがあなたのだめだった、あなたのためにね、ドクター。ところで、おめでとうございます。つまり、あなたは勝利間違いなしってことです。違いますか? あんたは、頑張りましたが、よくやったってわけではなかった。しかし、彼女はあんたの正体を示すことのできる唯一の人間だった。私にはもうあなたに触れもしない。誰にもね。あなたは嫌疑なし。あなたは勝ったんだ、ドクター。ただひとつ問題は、このあとに考えていたものを得られなかったってことですね。」
「それはどういう意味かね?」
「あの女ですよ。あなたは彼女を愛し、そして彼女を望んだ。そしてあなたは彼女のために人殺しを望んだ。しかし、今や彼女は逝ってしまった。すべての企てが、すべての努力が。そして、あなたの手元には何も残らなかった。」
「何を言おうとしてるのかね?」
「何も言おうとしてなんかいませんよ、ドクター。ただ私は、あー、あなたがこの状況ではこれからは耐えられぬほどの孤独な方になろうとしていると。だから、たぶん、手を胸に当てて、何かをすれば安まるのではないかと。」
「たとえばどんな?」
「真実を。」
「君は私に自白を求めているのかね?」
「ええ、不思議なことでもないでしょ。そもそも、何を望んでました? 考えて見てください、ドクター。あの女はもういないのです。それにあなたは、彼女に借りがあるでしょ。どうです、ドクター?」
「君はたいへん面白い人間だ。」
「面白くしているつもりはありません。」
「しかし、君は、自分で思っているより面白い。それで、君は私に罪をあがなえて欲しいのだね。私のまさに唯一の愛が死んで、私には生きていくための何もないと。」
「私が言いたいことのすべては、もしあなたが彼女を愛しているのなら...」
「彼女を愛してる? ねぇ、コロンボ君、私は君を買いかぶりすぎたようだ。君は人間の本質をよく理解していると思ってんだがね。私は彼女を愛したことなんかない。」
「まさか、ドクター。」
「いいや、事実さ。話し合ってた仮想の殺人者を思い出してもらおう。彼にはアリバイが必要だった。あの娘は利用できたんでね、それで彼は彼女を使っただけさ。ただそれだけのことだ。」
「いいえ。あなたが奥さんを殺したのは、あなたがあの女を愛していたからだ。」
「もし私がキャロルを殺したのなら、私が殺した証拠はないがね、それは自分のためであって、どこかのちんけな大部屋女優のためじゃない。」
「彼女は殺しを手伝ったんだから、彼女と結婚しなくてはならないでしょう。」
「そんなことはない。何かが準備されていたってこともある。たとえば、事故とかね。」
「常に先まで計画されていたというわけね、レイ?」
「私が耳にすべきことがあると聞かされたけど...」
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